2006-10-02 [長年日記]
λ. 内定式
某社の内定式に行って来た。最終面接の時にも一回行った場所なのに少し迷いそうになってしまった。内定通知を受け取り、誓約書を提出する。実感と責任のようなものを感じる。それから、他者と秘密保持契約を結んでいるかについて書く書類があったのだが、そういうのがあると知っていたら、契約書の写しを持っていったのになぁ。あと、TOEICの試験があって疲れた。TOEICをうけるのは初めてだったのだけど、2時間もかかるものだとは知らなかった。スコアが楽しみ。
2006-10-03 [長年日記]
λ. 従軍慰安婦問題「河野談話受け継ぐ」 安倍首相
衆参両院代表質問で共産党の志位和夫氏に従軍慰安婦問題に対する認識を問われ、安倍首相は「いわゆる従軍慰安婦の問題についての政府の基本的立場は、93年8月4日の河野官房長官談話を受け継いでいる」と述べたそうな。河野談話は正直どうかと思うが、まあ週末の中韓両国訪問を控えて両国への配慮を示したというところなんでしょうね。
ところで、ここのところ一部の野党やメディアは安倍政権の歴史認識について「何も語らないのは、極めて卑怯な発想だ」とか言っていたけど、別に積極的に語る必要もなかったのではないかと個人的には思っている。 中韓との歴史問題に関して言えば、歴史認識に左右される現実の外交問題(戦後補償問題等)は基本的に決着がついており、現在日本政府が歴史認識次第で何か積極的な政策をとるということは考えられないし。 もちろん、歴史問題を言い立ててくる中韓にどう対応していくかというのは重要なんだけど、これも別に歴史認識を明らかにすることありきというわけではない。歴史認識を語らないことを卑怯と言うのなら、歴史認識を語ることの必要性と利点を主張して欲しかった。
そんなこともあり、週末に首脳会談を控えたこの時期に、代表質問でこんな質問しているのはどうなんだろうと少し思った。歴史認識に関して安倍首相が中韓を刺激する意見を述べれば、せっかく漕ぎ着けた首脳会談をぶち壊してしまう可能性があるし、逆に中韓寄りの意見を述べれば、今後の安倍政権での外交の選択肢を狭めることになるかも知れない。いずれにしても日本の国益に資するとは思えないわけで……
2006-10-04 [長年日記]
λ. 日韓の外交官がSFCに来る -リージョナルアナトミー論Eでゲスト講演-
明日のリージョナルアナトミー論Eは「日本から見た日韓・日朝関係」という題での伊藤直樹外務省国際協力局総合計画課長(前北東アジア課長)の講演らしい。 面白そうなので、聴きに行く予定。
2006-10-05 [長年日記]
λ. 一票の格差5.13倍は「違憲ではない」との判決
それはそうと、新聞記事では一票の影響力の比として「議員一人当たりの有権者数」の比が何の説明もなく使われていたりするが、それが本当に影響力の比になっているのだろうかと気になった。協力ゲームの世界では、持っている票数と影響力が比例するとは限らなかったと思うし。
λ. Folds, Church Encodings, Builds, and Short Cut Fusion for Nested Types: A Principled Approach by Neil Ghani and Patricia Johann
<URL:http://lambda-the-ultimate.org/node/1717> より。 Build, Augment and Destroy, Universally の形式化を関手圏に適用すれば nested types に fold/build (hfold/hbuild) が定義できるという部分はあまりに当たり前過ぎる。 けど、generalized continuation の概念を使って hfold から gfold を定義している部分は読む価値があった。圏論的にはこの構成はKan拡張(Kan Extension)になっている。
【2006-12-23 追記】
T:M→A, K:M→C を関手として、
が任意のcについて存在すれば、この R が right Kan extension of T along K (RanK T) になっている(詳しくは Categories for Working Mathematician の p.237 の Theorem 1 (Right Kan Extension as a pointwise limit) を参照)。そこで、newtype Ran k t c = Ran{ iran :: forall x. (c -> k x) -> t x }
という型で表現している。
【2008-01-18 追記】 そういえば論文のファイルが消えちゃってるな。 POPL 2007 に reject されて、Initial Algebra Semantics is Enough! として、TLCA 2007 に投稿しなおしたのかな。
関連
λ. 日本から見た日韓・日朝関係
リージョナルアナトミー論Eでの、伊藤直樹外務省国際協力局総合計画課長(前北東アジア課長)の講演。
途中でラップトップのバッテリーが切れたこともあり、ほとんどメモを取っていなかった。実は夏休み中にΩ11にも座席にコンセントが設置されていたのだけど、設置されている位置が机の裏(?)だったので気づいてなかった。 設置場所は <URL:http://clip.sfc.keio.ac.jp/article.jsp?id=news06100603> みたいな感じ。
なお、次週は趙泰永(チョ・テヨン)在日韓国大使館参事官の講演「韓国から見た日韓・日朝関係」なので、そちらも参照のこと。
以下メモ(書きかけ)。
この地域を見る視座・視点
- 朝鮮半島は日本の安全保障に直接関わる地域
- 非常に重要な地域。
- 安全保障ということなので、米国との同盟や米国との利害の共有を前提として外交政策が展開されている。
- 日本の主権や人権がからむ事項が多い。
- 拉致問題、領土の問題(竹島)。
- 日本独自の外交課題の追求が必要な地域。
- 東アジア全体に、安定・繁栄のために、どういう枠組みを作っていくのか。
- 最近では東アジア共同体ということもよく言われる。将来の東アジア地域をどうするのかを見据えながら、この地域の安定ということを考えいかなくてはいけない。
- 韓国とは長きにわたって価値観を共有(「自由」「民主主義」「市場経済」)。そういう国との関係をどうやって軸にして、東アジアやアジア全体をどう捉えていくのか。
- この地域はまだまだ非常に不安定で、冷戦の残滓とも言える構造が残っている。メジャープレイヤと呼ばれる国の役割をどうするのか、その間のパワーバランスをどうするのか、まだまだ古典的な外交的な構図が残っている。
- 依然として戦後処理が残っている地域
- 韓国とは1965年に国交正常化したが、40年経っても依然として解決されていない部分もある。
- 北朝鮮とはまだ国交正常化できていない。不正常な状態が60年続いている。
日韓関係の実態
最近、日韓の関係が良いと見るべきか、悪いと見るべきか、なかなか難しいところがある。ただ、色々な数字の実態で見ると、日韓関係は決して悪い状況には無い。人の行き来も、投資額も増加している。
- 北東アジアの貿易構造
- 2000年の段階では3つの貿易関係はほとんど同じだった。
- この4,5年の間に大変大きく変わってしまった。
- 北東アジアの投資構造
- 貿易構造に似ている。
- 中国から北朝鮮への投資が伸びている。韓国から日本への投資よりも、中国から北朝鮮への投資の方が大きい。
- 大きいのは、中韓の間での相互の投資と、日本から中国への一方通行の投資。
- 北東アジアにおける人の移動
- 一番太いのは日韓関係。あわせて400万人を超えている。
- 韓国から中国へ、日本から中国への人の流れも大きいが、これは一方的な人の流れ。
- 双方向で大きく交流しているのが日韓の特徴。
日韓関係についての現状認識
- 色々な見方がある
- 「文世光事件以来、最悪」(韓国高官)
- 「かつてないほど交流、協力が進展」
- 世論調査 (今年の6月,7月に読売新聞と韓国日報で共同で実施)
- 現在の日韓関係
- 韓国の87%が(どちらかといえば)悪いという認識。
- 日本も6割近くが(どちらかといえば)悪いと認識。(どちらかといえば)良いと3割が認識。
- 信頼できるか
- 韓国の88%の人が日本をあまり信頼できないか全く信頼できない
- 日本も半分くらいの人は韓国をあまり信頼できないか全く信頼できない。ただ、4割くらいの人は韓国を信頼。
- 北朝鮮の印象
- 日韓の間で大きな差
- 日本では「非常に悪い」が9割
- 韓国では「非常に悪い」「どちらかといえば悪い」が7割。「非常に良い」「どちらかといえば良い」が3割。
- 現在の日韓関係
- 別の世論調査
- 日本の過去の行為がそれぞれの国の発展に影響しているか?
- 多くの国では、ほぼ半数が「影響ない」
- 韓国では75%が「妨げている」
- 自衛隊の海外派遣
- ASEANやインドでは賛成多数
- 韓国では55%が反対
- 日本の過去の行為がそれぞれの国の発展に影響しているか?
- 内閣府の世論調査: あなたは韓国に親しみを感じますか?
- 98年以降上昇
- 05年は若干低下
首脳の交流、協力の拡がり
首脳の交流・協力は小泉政権の終盤途絶えはしたが、実際はかなりこの5年数ヶ月の間行われていた
- 小泉総理は6回訪韓
- シャトル会談も開催
- 04年7月 済州島
- 04年12月 指宿(鹿児島県)
- 05年6月 ソウル
- (去年の後半できるかなと思ったが、なかなか韓国側が応じず成立しなかった)
- 05年11月APEC(釜山)の際の会談(30分程度)が最後
- 歴史問題一色で、雰囲気の良くないものだった。
- それ以降首脳会談は行われていない
- その次の首脳会談は安倍総理の9日月曜の韓国訪問
- 閣僚レベルで、環境、教育、観光、物流、法務などの協力を推進(日中韓の枠組みも)
- 産業協力 (ソニー/サムソン, 松下/LG, ボーダーフォン/SKテレコム)
- アジアにおける援助協調の試み
- 韓国はとうに卒業しドナーに回っていて、日本のJAICAや国際協力銀行(JBIC)とそのカウンターパートの間で、アジアの人作りをしようとか、協調融資をしようという話が出始めている。
ノムヒョン政権
- 一言で言うと「改革志向の強い政権」
- 民主化にいたるまでの新米・親日的な政権とは大きく異なる。
- これを支持したのが386世代(1980年代に大学に通い、1960年代生まれで、ノムヒョン政権誕生時やそれを支えた頃に30代)。
- 政権の軸: 歴史の清算
- 戦後の韓国の中の歴史の清算
- 日帝強占下の歴史の清算
- 戦前の真相究明のための委員会を作って、日本に協力・関与した人間の事実関係を究明するという作業をいまだに行っている。
- 国交正常化交渉の外交文書の公開にも踏み切った。
- 政権の軸: 北朝鮮への「平和繁栄政策」
- 金大中政権の「太陽政策」の継続
- 北朝鮮との間に「関与」をしていき、対話によってソフトランディングさせる。
- 特徴的なのは意思決定のスタイル
- 世代も変わった
- 国会議員もずいぶん若返った
- 大統領府に政権内部に知日派があまりいない
- 側近で固める政治
- ⇒ 対日政策に影響
ノムヒョン政権(2)
日韓関係は当初は良いスタートを切った。
- 金大中政権が成果を残していた。
- ワールドカップ共催
- 98年10月、来日し金大中大統領と小渕総理との間でパートナーシップ宣言という文章を作り、そこで「和解」という言葉を打ち出した。
- 小泉外交の成果
- 02年9月の北朝鮮訪問
- 日本の首相が始めて北朝鮮へ行った。一番重要だったのは拉致問題の解決だったが、北朝鮮に関与と対話をし、国交正常化をしていくという道筋を「平壌宣言」で指し示した。これは韓国のアプローチと軌を一にするものだった。
- 歴史共同研究
- 金大中時代2001年10月に小泉総理が韓国を訪問したときに、日韓の間で歴史の共同研究をしようということで合意。小此木法学部学部長にもご尽力いただき、昨年五月に第一期の共同歴史研究を終えている。成果物として3000ページほどの報告書が出ている。そして第二期もやっていこうと昨年6月に日韓首脳の間で合意。
- 追悼施設
- 今は現実的な選択肢ではなくなってしまっているが、01年10月に小泉首相の側から追悼施設という考え方を示しながら「検討する」という話をした。
- 日韓友情年・日韓FTA
- 昨年、国交正常化40年を記念して、日韓友情年として色々な交流行事をした。これを決めたのは小泉・ノムヒョンの東京での首脳会談(03年6月)。
- 日韓FTAの立ち上げは03年10月バンコクでの首脳会談
当初(1年から1年半)の日韓関係は決して悪くなかったが、そのことが逆に日本への期待感を高めてしまった。
日韓間の懸念事項
- 基本的な構図は80年代あるいは国交正常化前から変わらないが、3点セットとしてそろってきたのはこの20年の間。
去年の春にまとめて噴出。
- 領土 (竹島領有権、(海洋調査、EEZ))
- 去年の2月に島根県の県議会が、竹島を島根県に編入してから100周年を記念して「竹島の日」を制定する条例案を県議会に提出し、3月に成立。
- 歴史教科書
- 去年の春。中学の歴史教科書の検定結果が出た(4年に一回のこと)。
- 靖国神社参拝
- 大きく言えば歴史認識の問題だが、総理の参拝に象徴化されている。
- 就任の年から毎年参拝したが、日韓の間で顕在化したのは04年の暮れの指宿での会談以降。むしろ日中の間で持ち上がるのにあわせて日韓の間でも顕在化させた(韓国が強く意識を持つようになった)。
これらが去年の春からまとめて噴出したことで、日韓関係は少なくとも韓国から見たら大きく後退したと認識された。
- 領土 (竹島領有権、(海洋調査、EEZ))
- 北朝鮮問題を巡るアプローチの差
- 遺骨問題で05年初に顕在化。日朝関係を非常に悪くし、これが韓国との関係にも影響。
「国民への手紙」 (05年03月)
そうしたノムヒョン大統領の考え方が端的に出たのが、去年3月に島根県議会の「竹島の日」条例の制定に対して出した「韓日関係に関する対国民談話」。聞くところによると、大統領自身がパソコンに向かって原稿を打ち、本当に限られた側近(3,4人くらい)にしか事前に相談しなかったそうで、潘基文外交通商部長官にも事前には相談をせずにいきなりウェブサイトに載せたとか。
内容:
- 靖国参拝は反省と謝罪の真意を損なう
- (竹島領有権の主張は)過去の侵略を否定し、大韓民国の解放を否定する行為
- 外交戦争もあり得る(これまでとは違った対応をする)
なかなか一国の指導者が他の国のことや他の国との政策を形容するときに「外交戦争もあり得る」と言うのは、あまり例の無い非常に思い切った発言だと感じた。
ここで領土の問題と歴史の問題がノムヒョン大統領の頭の中で非常に強く連結されてしまったことで、いずれの問題についても出口が難しくなってしまった。竹島の領有権を日本が主張すること自体を過去の侵略の歴史を否定して云々と過去に絡めてられてしまう。ということは、日本は竹島の領有権を主張するべきでないということ。しかし、それは主権の問題であり我々にとって有り得ない選択肢。
こうした形で、ノムヒョン大統領が国民への手紙の中で自らの考えを率直に語ったこと自体が、日本の韓国への認識やノムヒョン大統領への認識に大きく影響。
背景にある要因
- 期待の裏返しとしての日本への失望
- 04年7月 (首脳会談 済州島)
- まだ日韓関係が良かった頃。「冬のソナタ」ブームまっさかり。冒頭20分、小泉総理とノムヒョン大統領の間で「冬のソナタ」と韓流ドラマの話ばかりしていた。
- 記者会見で日本の記者から質問されて、ノムヒョン大統領は「過去の問題は(自分の在任中はもう)公式に取り上げない」と発言。ただし、これを言ったがために韓国の中では即日慎重論が出てきて、翌日には事実上否定。
- これが日韓関係の事実上のピーク。それから徐々に低調に。(次の年の首脳会談ではノムヒョン大統領はのっけから歴史認識と教科書問題の話)
- 12月に指宿で首脳会談の際には、秋口に場所を決めようとしていたとき、鹿児島県でやろうというな感じで伝えたら、韓国サイドから「西郷隆盛さんの出身地ですね」「西郷隆盛といえば征韓論というのを打ち出した人じゃないですか」「場所は変えてもらえませんか」という話が内々に伝わってきたこともあった。
- その年の12月に防衛大綱の新しいのを打ち出しているが、「これを発表するタイミングと首脳会談のタイミングを考えてくださいね」という話もあった。
- もう少し前、その年の9月に韓国が80年代にウランの同位体の核の開発に繋がる実験をIAEAに報告せずに行っていたこと(IAEAのルール違反)が発覚。日本の新聞で大きく取り上げられ、日本政府の責任ある人(細田博之官房長官?)も遺憾を表明。これもノムヒョン大統領を刺激。さらに、そのことを大きく否定的に取り上げた新聞が、(ノムヒョン大統領の目からみると)日本の良心的市民層を代表すると思われていた新聞だったことがノムヒョン大統領を余計に刺激。
- 04年7月 (首脳会談 済州島)
- 改革の停滞、支持率の低下 (70%→30%)
- 北朝鮮問題の影響 (2回の訪朝+平壌宣言 →遺骨問題)
背景にある要因 (2)
もっと大きな要因。 これはノムヒョン政権に特有ではない。
- 冷戦の終焉
- 東アジアにおける力の相対化
- 潘基文長官が事務総長に。これも今でこそ有り得る話。
- 「脱日」。韓国側の日本に対する依存度が「貿易」でも「投資」でも「留学生の行き先」でも相対的に低下。そういうところが、むしろ日本との関係で緊張を一方的に激化させる。「以前であれば、最後は頼るのは日本なのだから、コブシのおろし方を考えながらコブシを上げたが、今や日本はそこまでの存在ではなくなった」ということを言う人もいる。これはかなり当たっている見方だと思う。
- ナショナリズムの強まり
- 06年6月、南北の首脳会談が成功したことで、韓国の北朝鮮との朝鮮戦争のことが一気に風化。
- ⇒ 「北東アジアのバランサー」(韓国は北東アジアのバランサーとして地域の平和と安定に尽くすべき)
- ⇒ アメリカに行って「北朝鮮の核開発は理解できる」と発言
06年9月 = 進展
この9月に一連の良い出来事があった。
- 海洋調査(放射能) : 共同調査の実施に合意
- 海洋調査を巡る問題でこの春からずいぶんごたごたしていたが、10月に放射能について日韓で共同調査することで合意。お互いのEEZの主張が重なる部分を含む。
- 戦前の朝鮮半島出身者の遺骨
- ここ2年くらい日韓の政府で作業を行っていた。
- 現在日本国内で共同調査を実施中。
- 日韓交流お祭り : 9月23,24日、ソウル大学路
- 去年友情年のときにやり、うまくいったので、今年も。今後も続けたい。
- 首脳電話会談(9月28日)
- 外相電話会談(10月2日)
- ⇒ 総理の訪韓(10月9日)、首脳会談開催へ
課題(未来志向の関係へ)
- 歴史認識をマネージし、外交カードとせず (教科書、共同研究、靖国参拝など)
- おそらく一番重要。
- お互いの認識は認識として尊重し、その認識の問題がどうなるかによって外交の成否を測らない。
- 北東アジアの繁栄、平和を協力して作る
- 一番大きいのは北朝鮮の問題。また核実験をやるという声明を出して相当緊張が高まっている。この問題をどうするか。それをいかに価値観を共有する国として解決していくのか。
- 日韓FTA。残念ながら交渉が止まってからほぼ二年。しかし、日韓のFTAなくして東アジア共同体、経済面でのASEANを含む広範な地域との協力は進まない。
- 領土問題とナショナリズム
- もう一つの出口のない話。
- 一番良い解決法はICJに持っていくということだが、お互いが管轄権を認めなければ、ICJは裁判を受理して審議することは出来ない。韓国は過去50年、昭和28年に日本がICJに持っていこうといって拒否してから、一貫して同じ立場。したがって、現実的にはこれは選択肢たりえない。
そうすると、時間をかけて、共同で竹島や周辺の漁業権益などを管理できるのかということを、時間をかけて枠組みを作っていくしかない。漁業の問題、調査の問題、そういったことも含めて、共同でどういうことが出来るのか、ということしか始めていくしかない。そういったことをきちんとした枠組みを作るのは非常に時間がかかる。時間がかかることを表す言葉:
- 易地思之(よくちさじ)=相手の立場になって考える。
- 結者解之(ちょるちゃへじ)=自分がおかした過ちは自ら解決すべきである。
胸の中にしまう必要のある韓国の人の考え。
- 首脳の対話
- 08年は「和解」から10年
- 韓国の新しい政権の誕生する年でもある(07年の12月が選挙)。少し今までと違った大統領が出てくるのではないか。
- そういうなかで日韓の関係を前に進めるような首脳の対話を実現することが大事。
- 2010年は日韓併合100年
- 上から下まで今とは少し違う日韓関係になっていることが、未来に向けて歩を進めるに当たって重要。
- 08年は「和解」から10年
日朝関係(現状)
- 「対話と圧力」が基本方針
- 「拉致問題の解決なくして国交正常化なし」
- 諸懸案(拉致問題、核/ミサイル問題)解決のめどなく、関係進展の兆しなし
- 最後の日朝政府間協議は06年2月に北京で4日間。全く進展なし。
- 六者会合−05年11月(北京)が最後。
- 最近のミサイル発射(7月)
- 北朝鮮に対する国内世論はさらに硬化
- 10月3日、北朝鮮は核実験実施につき声明
- 各国が、強い自制、安保理決議の履行を求める (日本は安保理の議長)
北朝鮮(金正日体制)
- 主体思想、先軍政治
- 金正日は97年10月8日、党総書記に。
- 翌年に国防委員長に。
- 報道によると10月8日が党総書記就任10年なので、この日に核実験をやるという人もいる。予断は出来ないが、そんなに早くはないのではないかという印象を持っている。
- 不法行為(偽札、麻薬など):年5億ドルの収入
- 為替のレートをどうするかによって、予算は1.3億ドルとも、25億ドルとも。
- 正規の予算に比べて、不法行為による収入が相当多い。
- 大量破壊兵器の拡散(ミサイル、核、BC)
- ミサイルによる収入は前段の不法行為ほどではないと思う。
- ミサイルを売るお客がいなくなってしまった。イランとシリアぐらいじゃないかと思う。パキスタンのような大きな顧客が北朝鮮からミサイルを買いにくくなっている。
- 人権問題
- 後継問題
- 今すぐにこれが起こるということはないと思う。
- 経済状態
- 一人当たりのGDPは韓国銀行の推定では数百ドル。おそらくはもっと少なくて、400ドルくらいではないか。
- グロスのGDPでみて大体2.5兆円くらい。日本の200分の1。
- 中国との経済的つながり
- 食糧
小泉総理の訪朝、「平壌宣言」
- 日朝国交正常化交渉 : 91年1月(平壌)から06年2月(北京)まで13回開催。
- その間、拉致問題を巡り、たびたび中断(93年から99年までは中断)。
- 2002年9月 小泉総理訪朝、「平壌宣言」
- 拉致問題の進展
- 核・ミサイルに対応
- 過去の謝罪と精算
- 戦後処理・経済協力方式 (日韓でやったのと同じ方式)
- 総理訪朝により、02年10月に拉致被害者5名が帰国。
- その直後の第12回正常化交渉は頓挫。
- 再び2年余、協議は途絶える。
小泉総理の再訪朝(04年5月)
国交正常化交渉再開のきっかけになったのは小泉総理の再訪朝。
- 拉致被害者の子女5名の帰国
- (ジェンキンス氏一家は7月に帰国)
- ミサイル発射モラトリアムの延長確認
- 人道支援の再開
- (拉致問題で遺骨の問題が出てきたので現在は中断をしている)
- 平壌宣言が遵守されている限りにおいて、制裁措置は発動しない。
- (その後ミサイルが打たれたので日本は制裁を発動した)
政府間協議の再開
- 日朝実務者協議 (04年8月,9月:北京、11月:平壌)
- 11月平壌では8日間のべ50時間の協議をしたが、北朝鮮側は物的証拠を示さず信頼性に欠ける説明。
- 遺骨問題(DNA鑑定の結果、横田めぐみさんとは別人のDNAを検出)
- →04年12月以降、再び没交渉状態に
六者協議プロセス(再開)
第二期ブッシュ政権の中で立ち上がってきた。
- 94年枠組み合意違反→03年8月、六者協議立ち上げ
- 05年1月:第2期ブッシュ政権(米国)
- 北朝鮮に対する基本的姿勢
- 核問題を対話で平和的に解決
- 「防御措置」、不法行為あるいは拡散に対して、きちんと対応して、物事が流れないように。
- 北朝鮮に対する基本的姿勢
- 05年7-8月および9月:第4回会合(のべ20日間)
- 共同声明
- 北朝鮮は核放棄
- 各国はエネルギー他の支援
- 日朝・米朝はそれぞれの二国間関係を懸案を解決して正常化する
- 共同声明
- 11月:第5回会合
- その後、「金融制裁」(北が反発)とワシントンの強硬姿勢ゆえ、再開のめど立たず。
- ワシントンも共同声明が出来たということで態度がだいぶ厳しくなった。共同声明が出来る過程で、アメリカの中でも行政府はなかなか一枚岩では無いので、国務省、NSC、色々な考え方があった。共同声明が出来るということであれば、NSCの側から非常に強いステートメントを出すべきだという議論があった。
- 共同声明がまとまったときの一番のポイントは、北朝鮮に原子炉・軽子炉をどういう形で提供するのかしないのかだった。最終的には共同声明の中では、適当な時期に軽水炉の供与する問題について話し合いをすると書いてある。
- 日本・アメリカ・韓国は会合の最後に、その適当な時期というのは核の廃棄を北朝鮮がした後だと明確に言った。それに加えて、アメリカ代表は北朝鮮のシステムを容認することは出来ないということまで踏み込んで言った。これは北朝鮮の体制、レジームを転換するということを示唆する言葉なので、大変北朝鮮が強く反発した。
- そのことと、いわゆる金融制裁と両面で、ものごとはなかなか進んでいない。
- 06年4月の東京非公式接触も功を奏さず。
- 北朝鮮側は米朝二国間協議をしたいと主張
- アメリカの代表は六者会合に出てくるように、それにまずコミットするよう主張
- 北朝鮮は六者協議に出るというのはあくまでアメリカと話してからという立場
- アプローチの違いから成果なし
日朝包括並行協議の開催(06年2月, 北京)
- 六者協議の共同声明合意に至る過程で日朝接触を再開
- 6者協議の共同声明を作る中で、北朝鮮側から日本側の活用するというか、アメリカとの間での仲介を求める部分もあった。また、アメリカの事を理解するのに日本の言葉を借りるという側面もあった。あるとき、六者会合の終了後に議場の中で日本の代表が北朝鮮の代表にぐるっと囲まれて、代表団全員が日本の代表の言葉を真摯に耳を傾けメモをとっていたということもあった。共同声明という成果をあげるために、何とか日本の力を借りたいという意識が、北朝鮮の代表団にあり、いわばそれと引き換えに日朝協議をやっても良いという話になった。
- 2月に包括並行協議をした意図: 平壌宣言を作った小泉政権が9月に終わることがその時点でハッキリしていて、その後誰が総理になるか大方予想がついていた。そういう日本の大きな政治の構図の中で、はたして、北朝鮮はどこまで今日朝関係を進める意思があるか、ということをテストする意味でも今年の二月に日朝包括協議をやった。
- 包括並行協議は(1)拉致問題、(2)安全保障、(3)国交正常化交渉(第14回)の3つの分野で
- 拉致問題だけでは北朝鮮が反発
- 日本は国交正常化だけをやるわけにはいかない
- 日朝関係の道筋を示した日朝平壌宣言はこの3つの問題からなる
- 平壌宣言の原点に戻って、北朝鮮のその時点での出方を測り試した。
- しかし、何ら誠意なく拉致問題に進展なし。結果はうまくいかなかった。
北朝鮮のミサイル発射(7月)
- 日本による制裁発動(7月5日)
- 国連安保理決議(7月15日)
- ミサイル発射、六者復帰、拡散防止の制裁措置
- 10カ国協議(北朝鮮は参加せず)
- 安保理決議実施の制裁発動(9月19日)
- 国連総会の際の協議には中、露も不参加。
- 北朝鮮による安保理決議の履行が大前提
- 核実験、プロトニウム再処理の動向を注視
- 中間選挙後の対応(?)
ミサイルの問題については、結果として、制裁発動、安保理決議を招いた。 今の核実験のからみでいうと、ミサイル発射準備の兆候は5月くらいからあった。 そして、6月の後半になって各国が北朝鮮に自制ということを言った。 これは6者会合のメンバー全員(中国も韓国もロシアも)が言った。 5:1という状況があって、外交的にはミサイルを打つということが 全く得にはならないという状態だった。 しかし、北朝鮮はそこでミサイルを撃った。
北朝鮮の交渉
- 瀬戸際外交
- 緊張を高める脅しで関心を示して譲歩を引き出す。
- 7月のミサイルや今回の核実験実施宣言もそう。
- 参加カード(圧力排除(金融制裁)、二国間協議と六者会合)
- 会合に参加する前に、条件をつけて会合に出る・出ないをやるというやり方。
- 何とか二国間対話を出来ないかが一番の題目。
- 自分からは求めず、まず拒否をして優位に立ち、相手に何かを求めさせる
- 会合のなかに入れば、もともと向こうは立場が弱いわけで、普通は向こうが何かを求めてくるわけだけど、決してそういうことをやらない。
- 体制に特異な面(強硬な軍部や特殊機関)を理由に要求を拒む
- そして、以前の交渉成果から動けない
- 94年枠組み合意(凍結と原子炉)
- 外交当局は強いmandateを持ってやっているわけではないということ。
今後の対応
- 「対話と圧力」というアプローチが変わることはない。
- 六者会合と日朝協議を「車の両輪」としてやっていく。
- しかし日朝関係だけで物事が動くわけではない。
- 核の問題、安全保障の問題、これはやはり米朝関係が動く中で、あわせて日朝関係も動くという話だということ。
- そのことは、今回この2月に日朝の包括協議で成果が出なかったということによって、北朝鮮側の対応というものがよりハッキリしたということではないかと思う。
- 現状では対話が進展する兆しなし→圧力
- 北朝鮮が一方的に緊張を高める現状だから、(北朝鮮にとって)不利になる状況を作る。
- このままでは北朝鮮にとって良い流れはないということを如何に北朝鮮に認識させるか。そのための、制裁措置であり国際的な圧力の輪ということになる。
- 今は対話で動かないから、圧力をかけて対話が出来る、対話で有利になる状況を作る。
- 圧力をかけることが目的ではなく最終的には対話を通じた解決。
- 米国の政策(平和的解決と防御措置)
- 金融制裁(送金停止、マネロン対策)は一定の効果(2400万ドルの凍結)は上がっているが、体制自体が揺らぐ兆候は見られない。
- 外的要因(洪水や食料不足)
- この夏前に洪水があったが想像していたよりは食料に影響しないのではないか。
- しかし、外的要因が事態を深刻化させ、危機感が高まるという可能性はある。
- 中国、韓国、(ロシア)=基本的には現状維持を目的
- 中国:条約、隣国の安定、経済関係
- 韓国:戦争風化、統一に慎重さ、市場の評価
- しかし、そういう国であっても、核実験というのをやればそれはレッドラインになるので、大変強い政策をとってくるのではないか。
- いずれにしても中国がどこまで北朝鮮への影響力を行使する状況が出てくるかが、今のデッドロックから抜け出すには大変大事。
質疑応答
- 質問
- 2005年9月ごろ、韓国との竹島の領有の問題でEEZ交渉がかなり難しい問題になっていた。そのとき、外務事務次官の谷内さんが直接韓国にいかれて、向こうの官僚と議論されたが、何故政治家の方でなく外務事務次官だったのか? その辺りの意思決定プロセスについて聞かせていただきたい。
- 回答
-
なかなか難しく、また微妙な話。今年の4月に日本の海上保安庁の調査線が出港をするという状況になって、それに韓国が反発して、さあどうするかという時の話だと思う。そのときは最終的には事務次官が出張して交渉してとりあえずの解決に漕ぎ着けた。
色々な要素があったと思うが、「今の韓国と話をするときにどのレベルで話をするのが一番効果的だろうか」ということを我々なりに考え、向こうの事務次官とこっちの事務次官の間ではないかという考えを持った。事務次官の間では、日韓の間では「戦略対話」として半年に一回くらい、日中との間では「総合政策対話」として3ヶ月に一回くらい対話を行っていて、信頼関係というのが次官レベルであった。
韓国の側で、政治的に上がり過ぎると、ただでさえ扱いにくい大統領周辺・青瓦台の影響というのがモロに出てくるということもあり、そういう判断をした。そういうことを日本の中では政治レベル、すなわち外務大臣・安倍官房長官・小泉総理と相談をして「今回は事務レベルでの最高責任者でやってこい」という指示を受けて交渉したという流れ。
- 質問
-
北朝鮮が核実験を今後行うという声明を出したが、米軍の発表によると8月ごろに地下核実験の準備をしている兆候があったという情報が伝わり。さらに、10月8日、9日あたりに、早ければ行うのではないかという情報が流れてきている。
7月のミサイル発射実験のときには、日本のインテリジェンス機関の不足ということもあって、情報の伝達、収集、それに基づいた政策決定について、アメリカの情報機関に依存した形で、早急とは言えない状態だった。
今後もし北朝鮮が地下核実験を行ったとしたら、ミサイル実験と違って外部から観測しにくい実験でもあり、そうなった場合に早急な情報収集が可能であるのか。また、どういった政策オプションが用意されているのかということをお伺いしたい。
- 回答
-
政策オプションの話については、既に現場から離れているので、答えるのは難しい。
情報収集能力については、日本の情報収集能力と米軍を中心とするアメリカの情報収集能力の間では差はある。しかし、日米間の緊密な情報の共有は行われている。我々が知らなくてはいけない情報については日米間で共有されており、そういう意味では相当迅速な情報収集が行われている。
もちろん、日本が自前で情報収集能力をつけていくという努力はしていけば良いが、それはそんなに短い時間で出来る話ではない。努力はしているが、現在は米軍との共有という関係をうまく使いながら、出来るだけ迅速に情報収集をしていくということで、これは相当程度機能していると考えてよい。
- 質問
- 課題という点で「歴史認識をマネージし、外交カードとしない」とおっしゃっていたが、歴史認識をマネージするということで、日本はどのような態度で臨むべきだと思われるか?
- 回答
-
小此木先生が先ほどなさったコメントの中で、安倍新政権は予想したよりは柔軟な姿勢を示している。その例として村山談話を継承する、あるいは従軍慰安婦についての河野官房長官談話を継承するということを言われた。
この辺りが一種の日韓あるいは近隣諸国の間での、歴史認識についての決め事だと思う。この決め事というのをどこまで維持しながら、新しい政権のカラー、特色、これは主張する外交ですから、を出していくのかというのがおそらく今の日本の事務当局にも求められている課題だと思う。
そういう中で、戦後の一種の決め事をうまく使いながら、今後へ向けた話として、歴史の共同研究のような、歴史共同研究をするということは、難しい歴史認識の問題について、問題を政治化させず、学問共同体を作ってマネージしていくってことですから、そういう枠組みをまた作って、物事が両方の学者の間できちんと整理された形で議論されていく、という形になれば、今よりはだいぶ落ち着いていくということになるのではないか。
- 質問
- 今回安倍総理が10月に訪中して首脳会談をやるということをこないだニュースで見た。その会談を行うまでに、外務省の方というのはどれぐらい前から準備や根回しをしているのか?
- 回答
-
良くわからない。
ただ、前の政権の間でも事務次官の対話というのを多分3ヶ月に一回くらい、日韓の間でも半年に一回くらいやっている。日韓よりも日中で特にそうだったと思うが、そういう対話を作る中で「うまく政治のきっかけが作れれば、日中関係をこういう風に進めていこうじゃないか」という話は当然やっている。日韓関係でも、9月の初めにもう一度、谷内が韓国に行ったが、それは海洋調査をどうするかという話だけをしているわけでは当然ない。その時点で、あれは9月の第一週だったと思うが、「じゃあ、新しい政権できますよ。誰が新しい総理誰になるかもう明らかですよ。その中でどういう新しい関係をどう作っていくか」というのは、世の中には当然説明しないけど、そういう意味での仕込みは当然やっている。
もう少し違う言い方をすると、韓国との間でも、中国との間でも、先ほど小此木先生が言われたように、なかなか首脳同士の信頼ではある時点で崩れてしまったところがあるから、そうなった段階から事務当局の間では「次に政治のきっかけが出来たときにどういう風に攻めていくか」というのは想定しながら、色々なやり取りはしている。
- コメント(小此木)
- 歴史の問題とか地政学的な問題とか領土問題とかを、ある一定の幅に収めておくのが指導者の役割。それをやってくれれば官僚ももっと良い仕事が出来るし、市民レベルの交流ももっと進展する。今までここ1,2年はその逆で上が壊したのを一生懸命下で支えている状態だった。それは多分これから元に戻っていくのではないかと思う。
λ. レッドドラゴン
盲目の女性がケーキを切り分けるとき、最初に中央に楊枝のようなものを刺して、それに添わせるように包丁を入れているのが、へぇと思った。
2006-10-06 [長年日記]
λ. Representing Cyclic Structures as Nested Datatypes by Makoto Hamana (浜名 誠), Neil Ghani, Tarmo Uustalu and Varmo Vene
を読んだ。de Bruijn encoding のテクニックを一般化して、循環的なデータ構造を nested data type として表現する話。循環にのみ着目して共有については扱っていない。代数にするのは自明なのに、余代数にするにはコンテキストの概念が必要になるのが、少し不思議に感じた。
【2007-08-25追記(2006-10-02に追記しようとして忘れてた内容)】 循環的データ型の余代数的な位置づけを考えた。 FinSetを有限集合だけに制限したSetの部分圏とする。
- FinSetには有限のダイアグラムの余極限が存在する
- FinSetはcowellpowered
- FinSetではhom-setは常に有限
Adámekらの議論から、FinSet∞ (= free cocompletion of FinSet w.r.t. for all finite colimits) には、F: FinSet→FinSet を拡張した ω-accessible (finitary) な関手 F∞: FinSet∞→FinSet∞ の終余代数が存在する。 この終余代数で循環的なデータ型を解釈出来るはず。
【追記】 ……というような話をもっとちゃんとしたのが、Monads of coalgebras: rational terms and term graphs に載っているような気がする。
λ. 「真紀子節」炸裂も空回り 安倍首相、冷静にかわす 衆院予算委
衆院予算委で田中真紀子氏が外交を色々と批判しているのをテレビで見ていたが、「あなたが外務大臣だったとき何をしたよ?」と心の中でツッコミをいれたのは私だけではあるまい。
参考: Wikipedia:田中真紀子
2006-10-07 [長年日記]
λ. 『銃・病原菌・鉄〈上巻〉—1万3000年にわたる人類史の謎』 ジャレド・ダイアモンド(Jared Diamond) [著], 倉骨 彰 [訳]
多くの人は「何故、世界の富は今のように偏っているのか」という問いを持ったことがあるはずだ。 この本ではこの不均衡の原因を時間を遡って解き明かしている。 現代から見て直接の原因となるのは、西暦1400〜1600年ごろ(大航海時代)の時点における、技術や政治機構の格差である。だが、何故その時点でそのような格差が存在したのか? 紀元前一万一千年ごろには人類はみな同じように狩猟採取によって生活していたが、何故そこからこれだけ異なる発展を遂げたのだろうか? 何故ある文明が発達させた技術を、他の文明は発達させることが出来なかったのか?
著者はその究極的な原因は人間の能力の差だとか偶然だとかではなく、環境的な要因によるものだとしている。気候はどうだったか、栽培に適した植物があったか、家畜化可能な大型哺乳類がいたか、金属資源が存在したか等々である。
特に栽培に適した植物があったかどうかは重要だった。狩猟採取と比べ、農耕はより多くの人口を効率的に養うことが可能であり、高い人口密度をもたらした。人口が多いということそれ自体、他民族を殺したり征服するのに有利であった。また、余剰食糧の貯蔵・蓄積は食糧生産に関わらない人を養うのに不可欠であり、集権的で複雑な経済的構造を有する社会を実現することを可能にした。集権的政治機構の発達は、大規模な灌漑のような土木作業を行えることを可能にし、さらなる生産性の向上を実現した。 結局、栽培可能な植物や飼育できる家畜を手に入れることが出来たことが、政治形態を発達させ、読み書きの能力や鉄器の製造技術のような技術が発達したことの根本的な原因であった。
次に家畜である。 大型哺乳類の家畜は人間社会に、肉や乳製品といった食料、農業に必要な肥料、陸上での輸送運搬手段、物作りに使える布類、軍事的な機動力、農耕作業、織物のための毛など様々なものを提供してきた。しかし、哺乳類で現在家畜化されているのはほんの数種類だけであり、他の様々な種には家畜化が困難なそれぞれの理由があった。そして、家畜化に適した大型哺乳類は大陸ごとに偏って分布していた。
家畜は人間社会に大きな影響を与えたが、様々な病原体に対する免疫を人々に植え付けた点も重要である。定住生活・高い人口密度・家畜の集団飼育繁殖といった条件を備えた社会では、伝染病が流行することとなる。ヨーロッパでは様々な集団感染症が出現した。これらの病原体は多くのヨーロッパ人の命を奪ったが、ヨーロッパ人が他の大陸を征服する際にはこれらの病原体への免疫を備えない先住民に壊滅的な打撃を与えた。コロンブス以前にいた北米の先住民の人口は、西洋から持ち込まれた病原体によって、なんとそれ以前の5%にまで減ってしまったそうだ。なんとも恐ろしい数字である。
また、ユーラシア大陸は東西に長く広がっているのに対して、アフリカ大陸と南北アメリカ大陸は南北に長く広がっている。東西への移動では緯度が変わらないため、ユーラシア大陸では農耕・家畜、その他様々な技術、そして伝染病が速いスピードで伝播した。それによってこれまで述べたような条件が強化された。
著者の主張が正しいのであれば、現在の富の偏りは偶然ではなく必然だったことになる。それはそれで救いの無い話ではあるなぁ。
ところで、この本を読んでエイジオブエンパイアをプレイしてみたくなりましたよ。
参考
2006-10-08 [長年日記]
λ. Arrows, like Monads, are Monoids by Chris Heunen and Bart Jacobs
<URL:http://lambda-the-ultimate.org/node/1750> より。 Arrowは Cop×C→C のモノイダル圏のモノイドとみなせるという話なのだけど、モノイダル圏の構成(特に⊗の定義)がややこしいというかトリッキーというか……
λ. 協力関係発展で一致 日中首脳会談
結局、落ち着くべきところに落ち着いたのではないかという印象。
2006-10-09 [長年日記]
λ. uniform proof
論理プログラミングの世界に uniform proof という概念があることを偶然知った。<URL:http://www.lix.polytechnique.fr/Labo/Dale.Miller/lolli/> の説明が分かりやすかったので以下に引用。
In order to determine whether a logic more expressive than Horn clauses (the logic of Prolog) could still be seen as the foundation of a logic programming language, Miller and Nadathur carefully analyzed the notion of goal-directedness and made the following definition. A proof is goal directed (or, in their words, uniform) if whenever a sequent has a non-atomic formula as its right hand side (that is, as the goal) then the rule used at that point is the one to decompose the goal. Logic programming, as distinct from theorem proving, can be seen as the search for uniform proofs. A logic is appropriate as a foundation of a logic programming language if uniform proofs are complete for that logic.
λ. 北朝鮮の核実験
あー、やるだろうとは思ってたけどついにやっちゃったのね。
結局、太陽政策を初めとする宥和政策は先送りに過ぎず、その間に脅威が単に増しただけだったのでしょうか?
(後でもう少し書く)
2006-10-10 [長年日記]
λ. 今日のITシステム
λ. 今日の英語: take 〜 on trust
「The reader who is prepared to take this on trust may prefer to skip straight to Corolllary 8.」みたいな使い方をするようだ。某論文より。
λ. ノーベル経済学賞:米のフェルプス教授に
フィリップス曲線と「貨幣錯覚」とかの話か。
2006-10-11 [長年日記]
λ. A Mixed Linear and Non-Linear Logic: Proofs, Terms and Models (Preliminary Report) by P. N. Benton
を読んだ。
Haskellのセマンティクスについて色々と作業しているうちに、(pointed) ω-cpo と連続関数の圏だけでなく正格な連続関数に制限した圏も同時に考える必要があることと、領域理論的な構成は線形論理のそれに似ているということには気づいたのだけど、そこから先は自分ではいまいち整理できていなかった。でも、この論文の前半を読んで領域理論と線形論理の関係がようやくすっきりした。
2006-10-12 [長年日記]
λ. 2-Category by John Power
モノイダル圏とか扱っていると、2圏の言葉がやはり便利そうなので、読んでみる。
ところで、XyPicの2cellの使い方が良くわからない。 テステス。
λ. 韓国から見た日韓・日朝関係
今週のリージョナルアナトミー論Eは、先週の伊藤直樹外務省国際協力局総合計画課長(前北東アジア課長)の講演「日本から見た日韓・日朝関係」に続いて、趙泰永(チョ・テヨン, 조태영, Cho Taiyoung)在日韓国大使館参事官の「韓国から見た日韓・日朝関係」という題での講演だった。講演の開始前に阿川先生が「これから何週間かは国際政治を見るのにまたとない良い機会だろう」と言っていたが、非常にタイムリーな講演だったのではないかと思う。
趙泰永氏は非常に人当たりのよい方で好印象だったのだけど、話の内容には日韓の溝や温度差を感じずにはいられない部分もあった。
以下メモ。
韓国はどういう国か?
- 人口
- 韓国は4800万。北は2300万。あわせて7千万くらい
- サイズ
- 日本の38万平方キロメートルに対して韓半島全体は約22万。 その中で10万が南で、北が12万くらい。
- 南北で分断されたのはいつ?
- 45年に植民地時代が終わる。50年から53年7月まで戦争が南北朝鮮の間であり、53年に休戦協定が出来て、それからずっと北と南に。今も韓半島は休戦状態であり平和協定がない。技術的にいうと戦争が続いている。 北と南の間に休戦ライン、だいたい38度線のあたり。休戦ラインの上の2km下の2km、あわせて4kmが非武装地帯(DMZ, DeMilitarized Zone)で、そこには通常入れない。そこは動物と植物の天国になっている。
- 今の大統領
- 盧武鉉(ノ・ムヒョン, 노무현, Roh Moo-hyun)
- 一人当たり国民所得
- 日本は大体$36000。韓国は$14000くらい。
隣の国がどういう国であるかを正確に知って欲しい。
韓日関係
9日の安倍総理の訪韓は成功裏に終わったと韓国の政府とプレスは評価。
韓日の様々な共通点
- 地理的に北東アジアに位置。地政学環境がすごく似ている。アメリカと同盟国。ただし、日韓は同盟国ではない。
- アジアで最も成熟した民主主義を謳っている。 「市場経済」「民主主義」「法の支配」という基本的な価値を共有。
- アジアの経済の面では日本も韓国も先進国。韓国はまだ先進国とは言えないけど先進国に近い。日本のGDPは大体5兆ドルくらい(世界で第二位)。韓国は7千億ドル(世界で11〜12位くらい)。
- OECD(いわゆるお金持ちのクラブ)のメンバー国。アジアでは日韓だけ。
- 文化や言語が似ている。語順がほぼ同じ。
共通点が多く、強い戦略的パートナーになれる余地も大きいと見ている。 ただし、両国間には問題点もある。それで、こうした問題をいかにマネージしながら、パートナーとして共に未来をひらいていくかが課題。
韓国人が重視している点、韓国人の考え
不幸なことに歴史問題がある。
- 日本の植民統治が1945年8月15日まであり、韓国は日本の植民地を経験。
- 日本政府の立場: 併合条約は国際法に則って結ばれて、問題ない。
- 韓国の立場: 強制的に結ばれたのでそもそも無効。 「この世の中に自分の国を『どうぞ』と差しあげる国がどこにあるのか」という論理。
- 45年に植民地時代が終わって20年たった1965年に外交関係をまた結んだ(国交正常化)。1965年6月22日に署名されて、12月22日に発効。
- 45年から60年以上たったが、不幸なことに両国関係に歴史が影を落している。
- 日本側の主張
- 「60年経ったし、この60年間平和国家を目指してきた。平和国家として立派な業績がある。だから過去は忘れてこれからの未来に向けていきましょう」(いわゆる未来志向)
- 韓国側の主張
- 「それは結構なことだけど、過去は過去としてきちんと清算してください」「過去をまず反省して、こういうことは二度とやらないと」「反省をしていることをわかるようにしてください」
- 日本側の主張
- 「幾度も謝罪したじゃないですか。お詫びしたし、条約も、文章も書いたし、村山談話もあったし」「いまだに、過去の話ばかりするのですか?」
- 韓国側の主張
- 「それはわかります。でも、日本の政治家とか偉い方の発言をみると、あまり反省していないような気がします」「われわれに納得できるように、安心できるようにしてください」
- 堂々巡り。水掛け論。
- 歴史問題を双方が知恵を出してしっかり解決して、その基礎の上でたくましい両国関係を築いていきたい。
- 望んでいるのは「もう一度謝ってください」ということではなく、「被害者であった韓国人の心を傷つける発言をしないでほしい」「反省の心を行動をもって示して欲しい」ということだけ。
- 靖國神社問題
- 韓国人の心の中で大きな問題。韓国人の考え方は「戦争を起こした責任者、いわゆるA級戦犯が祭られている。その神社を参拝しながら、どうやってあの戦争を反省しているということが出来るのか。矛盾ではないのか?」というもの。ドイツではナチの戦犯を祭ったりしていないし、参拝もしていない。
- 靖国には2万2千人の韓国人が祭られている。強制動員されて日本の軍人・軍属になった韓国人が、本人や遺族の意思とは関係なく合祀された。これはとんでもない話だとして合祀の解除を求めているし裁判も訴えているが、裁判でも負けた。
- 政治指導者の参拝がないことを望んでいる。本人や遺族の意思と関係なく祭られている2万2千人の韓国人も分祀されることを望んでいる。
- サハリン在住の韓国人の帰国問題。植民地時代に本人の意思とは関係なくサハリンに行った韓国人が終戦後帰らなくなった。日本の国籍を失ったが、当時のソ連の国籍でもないし、しかも韓国とソ連は国交もない。法の死角で帰れなくなった人がいまだにいる。ロシア政府と彼らをどうやって本国に戻せるか議論している。
- 遺骨問題。旧日本人の軍人・軍属となって戦死した韓国人の遺骨の収集がまだ終わっていない。
- 韓国人B・C級戦犯の問題。韓国人も軍属になって捕虜監視員として働いた。戦後裁判になって彼らもB・C級戦犯になり、一部は処刑された。一部はいまだに日本政府に補償を求めている。
もう少し明るい話。
- 韓日FTA。
- 非常に良い話だと思う。同じ価値観を持ち、近くて交流も大きな国はFTAをやるべき。
- 2003年から2004年まで交渉が6回あったが、農産物の問題でその後の交渉が止まっている。最初は高い(自由化の)レベルのFTAを目指す約束をしたが、日本側の「農産物は自由化の率を上げるのは難しい」という話があり、韓国側は「それは話が変わるんじゃないか。違うんじゃないか」という話になり、両政府は言い争いをしている。
- 足踏み状態だが早く再開されることを望んでいる。
- 羽田空港と韓国ソウルの金浦(キンポ)空港の間のシャトル便
- 両方とももともとは国内線向けの空港だけど、現在は毎日8便飛んでいる。
- 拡大したほうが良いと思うし、多くの韓国人はそう望んでいる。
- 羽田とプサン、羽田と済州島とか、需要も希望もある。
- 羽田と上海を結ぶ話も出ている。これが実現すると羽田・金浦・上海の三角の空路が出来、三国間の観光の振興のも非常に役立つと考えている。
日朝関係
- 韓半島
- 戦争が終わっているわけではなく、いまだ停戦状態。平和協定を結ばなくてはならない。また地球上で冷戦構造が残っている唯一の地域。
- 韓国は現在唯一の分断国
- 緊張が非常に高い地域
- 月曜日に核実験を行ったと北朝鮮が発表
- 北朝鮮の人口は2300万人だが、軍隊は117万。韓国は人口4800万で軍隊は68万。正常とは言えない。
- 韓国は莫大な国防費を負担。国防費は年間130億ドルで、これはGDPの約3%。結構高い水準。日本はGDPの1%弱で約400億ドル。ただ物価の水準も高いので単純な比較は出来ない。北朝鮮はGDPの40%くらいが国防費。
- 日朝関係は、1992年から始まって交渉が何回か行われたが、今は止まっている。去年の2月にも北京で交渉が行われ、三つのトラックで話をしていこうという合意まで出来たが、拉致問題もミサイルも核もあり、現在交渉が止まっている。
- 韓国の基本的立場
- 日朝国交正常化を支持。支持どころか促している。
- 韓半島の緊張緩和が最大の目的。
- 緊張緩和に役立つと信じているため日朝国交正常化を支持。
- 当面の目的は、北朝鮮を国際社会の正常な(まともな)一員にさせたい。それが韓半島の緊張緩和や日朝国交正常化に寄与すると信じている。
- 日朝の交渉で頭越しは困る。韓国と良く相談して欲しい。これには日本側も賛成している。
- 月曜に北朝鮮が核実験を行ったと発表
- 国連安保理で制裁決議案が議論
- 日本は独自の追加制裁案を発表
- 韓国でもこれまでの北朝鮮政策は間違っていたのではないかという批判が出ている
- 韓国の立場は「断じて容認できない」というもの。
- (日本などの)一部では「韓国は、北の核兵器はいずれは自分のものになると思って、心の中ではそう反対して無いんじゃないか?」という指摘があると聞いている。そういう話が全然無いわけではないが、そう考えているのはごく一部で、見識の無い人の主張だと思う。韓国人の99%以上は「北朝鮮の核は絶対許さない」と思っている。
- 具体的にどうしたらよいのか
- 北をどう見て、どうアプローチしたらよいのか、という問題に尽きる
- 北朝鮮はどうしてこういうことをしているのか、その分析から始まる。分析に正解はないが、経験や蓄積してきた知識から分析するしかない
- 韓国はこの10年間「抱擁政策(太陽政策)」をやってきた。
- 出発点: 「北が悪いことばかりしているのは、心の中が不安(insecure)だから」
- 分析: 「何もないから不安」「この地域で自分だけが何も無い」。アメリカに対する被害妄想や被害意識(「レジームチェンジをするんじゃないか?」等)。不安で「このままではいられない」と考えたのではないか。
- 「その不安を解消してやろう」「それが結局近道(歴史上、外からの圧力で政権がかわった例はあまり無い)」 ⇒ 抱擁政策
- 南北の交流が増えるなど、ある程度の成果があった
- 金剛山観光。韓半島の東海岸にある、休戦ラインのすぐ上の、韓国で一番美しいと言われている山。10万人くらいが北朝鮮を訪問。
- 休戦ラインのすぐ上の都市、開城(ケソン)に工団(工業団地)を作り、韓国企業が進出し、製品を作って逆輸入する、というプロジェクトが始まった。
- その他交流プロジェクトがいろいろ出来ている。北朝鮮の自然資源を利用する代わりにお金をあげるとか、お互いにとって利益になるプロジェクトが出来ている。
- 人の往来が出来、物の往来が出来、お金の往来が出来、信頼関係も増えた。それが緊張緩和に役立つと考えていたし、実際あったと考えている。以前は船で金剛山観光へ行っていたが、今は自分の車で行ける。
- 一部で「抱擁政策で北朝鮮に流れたお金がミサイル開発・核兵器開発に使われたのではないか」との批判の声もある。今のままでは抱擁政策は出来ないと考えているが、抱擁政策のせいで核開発などをしたという意見にはまだ同意していない。
- 韓国の中には「北は核兵器とミサイルを放棄し、外と付き合って、正常な一員になって、自分の体制も保障されてされて、といった道を選ぼうとしたが、あまりに外からの呼応がなくてこういう道を選んでしまった」という見方もある。
- 日本政府には日本政府なりの見方や政策があるが、それに対してはコメントしたくない。
まとめ
- 歴史問題など様々な問題があるが、日韓は強力なパートナーになれる。
- 朝鮮半島の緊張緩和に、日本と韓国は緊密に協力すべき。
- 長期的には朝鮮半島はいずれは統一されると思う。それは民主主義の元での統一にならざるを得ないし、そうなると100%確信している。そのプロセスに日本は大きく寄与できるし、協力していただきたい。そうなると、(取引ではないが)歴史問題もほぼ無くなるのではないかと思っている。
- ヨーロッパには地域機構、EUやOECDとかOSCとかの安全保障関係の枠組みがあり、うらやましい。この地域でもやってみるべき。日中の競争、ライヴァル関係というのを耳にしているが、そういうゼロサムの関係でとらえるべきではない。アジアでも地域全体の皆の利益になるような関係作り、そのための枠組み、地域協力機構を作るべきではないかと思う。日韓はその中核になりうる。
- EAS(East Asia Summit, 東アジア首脳会議) や ASEAN+3 。ASEAN+3はASEAN中心で+3はおまけだけど、皆で平等な形で会いましょうというのがEAS。この枠組みを発展させると、地域協力機構、さらには地域安全保障にもなりうるのではないかと思う。また、六者会談もうまく育て上げれば、一つの安全保障機構、安全保障対話の枠組みの種になれると思っている。日本と韓国が手を携えて、地域全体をよくする枠組み作りに協力したいと思っている。
- 韓国と日本は良く似ている。が、似て非なる部分もある。例えば、「八方美人」という言葉。韓国では「何かもかも出来る」という非常に良い意味。日本では否定的なイメージ。似ている部分は大事に育て上げ、非なる部分には気をつけて協力していけば、必ず立派な隣国関係になれるのではないかと思う。
柳町功総合政策学部助教授のコメント
(後で書くかも?)
質疑応答
- 質問
- 「日韓首脳会談で、安倍首相は北朝鮮の核実験に関して、韓国と共同宣言を出そうとしたが、盧武鉉大統領は歴史認識の改善を議題に持ち出して、結局共同宣言を出すことに失敗してしまった」と新聞で読んだ。北朝鮮の核開発の問題と歴史認識の問題、韓国にとってどちらが重要か?
- 回答
- 日本の新聞報道は若干事実関係が違う。日本の新聞は「盧武鉉大統領は日本側の共同声明の提案にあまり取り合わずに歴史の話をした」と報道しているが、実際は、韓国側は「日韓だけで今の段階で慌てて何かを出すよりは、みんなで相談・調整したものを出したほうが良いのではないか」「歴史のこと等も入れてバランスのとれた内容にした方が良いのではないか」といった提案をしたが、結局調整とかする時間がなかったりとかでダメになった。というのが事実。
- 質問
- 開城工業地帯・金剛山観光などの南北交流プロジェクトは今後どうするつもりか?
- 回答
- 大きな議論の対象になっている。即刻中止すべきという主張もあるが、与党はまだ決めかねている。政府の許可などはあるが、あくまで民間企業が行っているプロジェクトであり、民主主義・市場経済の国家で、政府がそう簡単にやめろとは言えない。いろいろな事を総合的に考慮しながら決定されるのではないか。
- 質問
- 地域共同体に関する質問。ヨーロッパにおいてはキリスト教という共通するファクタがあり、また構成する国の政治機構も似ている。それに対して宗教も政治の機構も違うアジアで東アジア協力体は難しいのではないか。という意見がある。それに対してどう考えているか?
- 回答
-
ヨーロッパの事にはあまり詳しくないが、指摘の通りだと思う。ヨーロッパはカトリックか新教かは別にしてもキリスト教という共通点はある。ただ、ヨーロッパの歴史をみても、様々な戦争があり、第一次・第二次世界大戦という悲惨な戦争も経験した。感情的な部分や歴史的な軋轢もあるが、なんとかやっている。
東アジアはより難しいかもしれない。共通する宗教も無いし歴史的背景も(ヨーロッパとは?)違うかもしれない。国のサイズも違う。ただ、より難しくはあるが、出来ないとは考えていない。EASなど、まだ赤ん坊のようなものだが、生まれた。それを大事に育て上げればヨーロッパほどではないが、何とか出来る。それに協調の枠組みを作ることでお互い自重するという面もある。
確かに難しくはあるが不可能だとは考えていない。それに向けて努力すべきではないかと思う。
- 質問
- 東アジア共同体を構築するにあたって、国と国の体制の違いをどのように克服すべきと考えているか?
- 回答
-
EUの拡大では、かつて共産主義・社会主義で、体制が変わってからあまり経っていない国も入りつつあり、共通善(?)を拡大するため努力している。より難しいのは確かだが、努力する必要がある。
枠組みは皆にとってプラスになると思う。東アジアの国々がギャングアップして他の地域に対抗するといった狭い考えではダメで、世界からも認められないと思う。「開かれた地域主義」という方向で枠組みを作って、知恵を出し合ってやれば、不便な点もあるが、みんなのためになるし、地域の安定にも寄与するのではないかと思う。例えば、日本のメディアでは中国の軍事費への懸念があるが、二国間で解決するのは難しい。しかし、枠組みがあって、ガイドラインがあって皆が守らなければ……という話になれば皆のためになると思う。
- 質問
- 国連安保理で制裁決議案が議論されていて、国連憲章第7章の41条で留めるか、42条の軍事行動も含めるかが議論されている。韓国の政府の意見と、国民の間の意見・風潮はどうか?
- 回答
-
制裁決議案では大体「acting on the chapter 7 of the united nation charter」というような形で憲章7章を丸ごと引用し、経済制裁も軍事的な制裁も包括する。しかし、だからといってそのまま軍事行動が出来るわけではない。軍事行動を起こす前にはまた決議が必要(イラクの場合もそうだった)。だが、7章を丸ごと含むのは軍事的行動をimplyするので誰もが不安になる。イランの場合では「第7章41条に基づいて」という文言が入った。
日本とアメリカは第7章を丸ごと引用すべきという意見だと思う。韓国政府の立場については、まだ本国から方針が来てはいないし、敏感な問題なので個人的な意見も差し控えたい。
韓国の国民の間の意見は分かれている。大体の韓国人の心情は「やっぱり戦争は嫌」という意見ではないかと思う。直接被害を受けるのは韓国人であり、「まだ軍事的制裁を考えるのは早く、戦争は回避すべき」と考えてる人が多いのではないか。逆に日本の国民の間の風潮はどのようなものか?
- それに対する質問者の回答
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42条に基づいて軍事的制裁を行うということになっても、集団的自衛権を政府解釈では認めておらず、行使できないという制約があるので、何か対岸の火事という雰囲気がある。もちろん戦後処理という形で自衛隊をイラクのような形で送ることはあると思うが、韓国に比べると、やはり自らのこととして捉えていないところがある。
経済制裁としては、万景峰号の入港禁止がミサイル実験をきっかけに実施されているので、それの延長として捉えて41条の方が比較的受け入れやすいのではないか。仮に42条を受け入れるということになっても、日本人にはその必要性が理解できず、どっちでも良いという人が多いのではないか。
- 質問
- 靖国問題に対して批判を受けるのはA級戦犯が祭られているのが原因だと思っているが、もし分祀した場合には首相参拝に対する韓国の方の反応はどう変わるか?
- 回答
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分祀は「御霊をコピーして別のところでも祭る(オリジナルは残る)」というような意味なので、「合祀解除」という言葉を使ってる。で、A級戦犯を「分祀」してもそれだけではダメ。遊就館に現れているような靖国の歴史観と、そこにA級戦犯が祭られていること、両方を問題にしている。だから、「A級戦犯を分祀してくれ」とは言わず「靖国に行かないでください」と言っている。そして、どうやって解決するかは日本国民の問題ということでお任せしている。
靖国神社に「分祀」出来ない理由を聞いてみた事がある。「祭られた御霊は一体になっていて、これをほぐすことは出来ない」「教理(教義?)上、一旦祭られたら分祀ということはない」「だから合祀された韓国人も分祀できない」。これは教理の解釈だと思う。しかし、教理の解釈は時代によって変わる。キリスト教をみても、昔は女性は牧師になれなかったが、今はメソジストでは女性も牧師になれる。教理の解釈は時代によって変わるが、キリスト教そのものは残る。時代が変わったら教理の解釈も変えれば良いではないか。と言ったら、「これは根幹に関わる問題なので、変えることはできない」とのこと。
- 質問
- 南北統一について、東西ドイツの統合では今でも結構東西の格差が開いているように、統合にも色々と問題はあるだろうけど、韓国はどこまで積極的に統合したいと考えているのか?
- 回答
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韓国人はみな統一を望んでいる。同じ民族という面もあるが、元々一つの国だったから、統一を望むのは自然。ただ、これは究極的な目標であり目指しているが、急いでいるわけではない。抱擁政策もそういうこと。統一を諦めたわけではなく、まずは平和共存を目指し、時期がきたら統一。このことは北に「南に吸収される」という被害意識を与えず、安心感を与える。
ドイツの例をみたが、統一には準備と忍耐が必要だとわかっている。北朝鮮を国際社会のまともな一員にすることは統一に寄与する。いきなり統一するよりもその方がずっとまし。準備をし、出来る時期が来たら統一すると考えている。統一について「どうでもよい」とか「困る」とは思っていない。
λ. 『謎の彼女X (1)』 植芝 理一
2006-10-13 [長年日記]
λ. 著作権の最適保護水準 by 田中辰雄
小熊さんのところで取り上げられていたので読んでみる。
「社会全体の効用を最大化する保護水準を取るべき」という一般論に関しては、あまりに当たり前すぎて、特に思うところはない。
ただ、Winnyでのファイル交換が音楽CDの売り上げに影響を与えていないという議論は説得力に欠けると思う。ほとんどダウンロードがされていない曲と、ダウンロードされている曲の売り上げ枚数を比較しているのだけど、両者の平均がほぼ同じであることから「ファイル交換は音楽CDの売り上げに影響を与えていない」という事を読み取るには、ファイル交換が行われていること以外の条件が両グループで同じであることを確認する必要があるはず。だが、その点について全く書かれていない。例えば、もし両者の購買層が全く異なっているとしたら、両者をこのように比較することに何の意味も無いはずで……
まあ、言及されている論文の方にはその辺りのこともきちんと書いてあるのだとは思うが……
- Tanaka, Tatsuo, 2004, “Is strong copyright protection welfare-improving? -Case of Japan’s copycontrolled compact discs” Conference paper at EARIE 2004 (European Association for research in Industrial Economics 2004) in Berlin. <URL:http://www.diw.de/english/produkte/veranstaltungen/earie2004/papers/docs/2004-343-V01.pdf>
- Tanaka, Tatsuo, 2004, “Does file sharing reduce music CD sales?: A case of Japan,” Hitotsubashi University Institute of Innovation Research, IIR Working Paper, WP#05-08, <URL:http://www.iir.hit-u.ac.jp/file/WP05-08tanaka.pdf>
λ. Parametricty and Mulry's Strong Dinaturality by A. Eppendahl
を読んだ。
「modulo an internalisation」という言い方は便利だと思った。
⇃↾: (D↓)op → (Dop)↑ は を に移す関手。
Funの定義が良くわからなかった。「the category of functors and functor squares commuting up to given natural isomorphism」と説明されているが……。対象は関手F:C→Dで、(F:C→D)から(F´:C´→D´) への射は、関手 G: C→C´, H: D→D´ と自然同型α: F´G ≅ HF の組ということだろうか?
それから、Fixed Point Object と regular category の定義も良くわからない。後で調べる。
により、y(U[LU-,+]D) ≅ y([U-,U+]C) で、したがって U[LU-,+]D ≅ [U-,U+]C なので、τ: U[LU-,+]D ⇒ [U-,U+]Cを定義できる。
より具体的には、
τ-,+ = curry(U(uncurry(ε[LU-,+]D)∘(mU[LU-,+]D,U-)-1)∘η[LU-,+]D⊗U+): U[LU-,+]D→[U-,U+]C と定義すればよい。
[-,+]HU = [LU-,+]D という定義で closed structure をHUにlift出来ると書いてあるが、これは一般には出来ないのではないかと思う。
HU(A, [B,C]_HU) = {- definition of [-,+]_HU -} HU(A, [LUB,C]_D) = {- definition of HU's homset -} C(UA, U([LUB,C]_D)) =~ {- adjunction: ← -} D(LUA, [LUB,C]_D) =~ {- uncurrying -} D(LUA *_D LUB, C) =~ {- isomorphism m_{UA,UB}: LUA *_D LUB → L(UA *_C UB) -} D(L(UA *_C UB), C) =~ {- adjunction: → -} C(UA *_C UB, UC) ?? {- ここにギャップ -} C(U(A *_HU B), UC) = {- definition of HU's homset -} HU(A *_HU B, C)
任意のA,B∈|D|に対してX∈|D|が存在して、UA ⊗C UB ≅ UX が自然同型になるならば、この X を A ⊗HU B とすればよい。けど、これが常にあるとは限らないのではないかと思う。ここで例としてあがっている忘却関手 U: Cppo⊥ → Cpo の場合には問題ない?
λ. GHC 6.6
今更だけど、GHCの6.6がリリースされたそうな。6.4がリリースされたのが2005年3月11日だったから、大体一年半ぶりのメジャーリリースになるのかな。今回も色々新しい機能や変更が入ってるね。
関連エントリ:
2006-10-15 [長年日記]
λ. 第二十二回圏論勉強会
今回はかつてない人数で驚いたが、とても楽しかった。
p.334 Exercise 3:
元の問題の意図に沿う方法はともかく、とりあえずparamorphismの概念を使って示しておく。paramorphismの定義と一意性の証明については Categorical programming with inductive and coinductive types を参照せよ。
(N, [0,s])を自己関手 F(X)=1+X の始代数とする。
f0: A→Y と h: N×A×Y→Y を使って以下を定義する。
- f0´: 1→YA
- h´ = λf,n. λa. h(n,a,f(a)) : YA×N→YA
- φ = [f0´, h´] : F(YA×N)→YA
すると、f ∘ [0,s] = φ ∘ F <f,id> を満たす f : N→YA が一意に存在する(この f がparamorphismで <|φ|> などと書く)。この等式を展開すると、
- f∘0 = f0´
- f∘s = h´∘<f,id>
となり、これは大雑把に解釈すると
- f(0,a) = f0(a)
- f(n+1,a) = h´(f(n),n)(a) = h(n,a,f(n,a))
ということを表しているので、目的の関数fは一意に存在する。
2006-10-16 [長年日記]
λ. のだめカンタービレ
漫画は読んでたのだけど、音が聴こえるっていいな。あのシーンではこんな音が聴こえていたのね。まあ、変な演奏とか言ってもどう変なのか良くわかんないのだが。あと、安っぽいCGやどう見ても模型な飛行機事故がいい味を出していた。
λ. Cycle Therapy - A Prescription for Fold and Unfold on Regular Trees by Franklyn Turbak and J. B. Wells
を読んだ。
2006-10-17 [長年日記]
λ. TOEICの結果
こないだ受けたTOEICの結果が出ていた。
- Total Score
- 840
- Listening Score
- 420
- Reading Score
- 420
リスニングは予想以上に出来ていたが、リーディングは予想以上にミスってたようだ。けど、まあ初受験ならこんなもんだろう。次に受けるときは900点を目指したい。
λ. 『ベルセルク (31)』 三浦 建太郎
表紙を見て一瞬バットマンかと思った。
塒神(クンダリーニ)は、軍荼利明王からきていて、その真言が「オン・アミリテイ・ウン・パッタ」で種字が下の「うん」という文字なのか。仏教のこの辺りのシステムは知ってると楽しそうかもと思った。 ところで、梵字(悉曇,Siddham)はUnicodeでもサポートされていないんだなぁ。それなりに需要はあると思うのに。(追記: 一応、Roadmap to the SMPにはProposalがあるのか)
2006-10-18 [長年日記]
λ. ATH-CK32 BK 密閉型インナーイヤーヘッドホン
こないだの圏論勉強会のときにiPod付属のイヤホンの音質は最悪(コンビニで売ってるイヤホンにも劣るとか)と聞いたのと、カナル型のイヤホンがどんな感じか知りたかったので買ってみた。音質の違いはよく分からないが、遮音性はいいなぁ。
2006-10-22 [長年日記]
λ. monoidal closed functor?
MCC(Monoidal Closed Category) M, M´と Monoidal Functor (F,m): M→M´ が与えられているとする。
自然変換nX,Y: F[X,Y]→[FX,FY]´ を以下のように定義する。
nX,Y = (([FX, Fe ∘ m[X,Y],X]´ ∘ curry´(F[X,Y] ⊗´ FX)) = curry´(Fe ∘ m[X,Y],X)
このとき以下が成り立つ。
- e´∘(nX,Y ⊗´ FX) = Fe ∘ m[X,Y],X
e´∘ (nX,Y ⊗´ FX)
= e´∘ (curry´(Fe ∘ m[X,Y],X) ⊗´ FX)
= Fe´ ∘ m[X,Y],X - ∀f: Z⊗X→Y. nX,Y ∘ F(curry(f)) = curry´(Ff ∘ mZ,X)
nX,Y ∘ F(curry(f))
= curry´(Fe ∘ m[X,Y],X) ∘ F(curry(f))
= curry´(e´ ∘ (curry´(Fe ∘ m[X,Y],X) ∘ F(curry(f)))⊗´ FX)
= curry´(e´ ∘ (curry´(Fe ∘ m[X,Y],X)⊗´ FX) ∘ (F(curry(f))⊗´ FX ))
= curry´(Fe ∘ m[X,Y],X ∘ F(curry(f))⊗´ FX )
= curry´(Fe ∘ F(curry(f)⊗X) ∘ mZ,X)
= curry´(F(e ∘ curry(f)⊗X) ∘ mZ,X)
= curry´(Ff ∘ mZ,X)
2006-10-25 [長年日記]
λ. 始代数の持ち上げ
関手 F: C→D, G: D→C と、FG: D→D の始代数 (μFG, in_FG: FG(μFG)→μFG) があったとする。このとき、(G(μFG), G(in_FG): GFG(μFG)→G(μFG)) は GF: C→C の始代数になっている。任意のGF代数 (X, φ: GFX→X) への射 fold_GF(φ) は φ . G(fold_FG(Fφ)) で定義する。
準同型になっていることの確認:
fold_GF(φ) . G(in_FG) = φ . G(fold_FG(Fφ)) . G(in_FG) = φ . G(fold_FG(Fφ) . in_FG) = φ . G(Fφ . FG(fold_FG(Fφ))) = φ . GF(φ . G(fold_FG(Fφ))) = φ . GF(fold_GF(φ))
一意性の確認:
f . G(in_FG) = φ . GFf ⇒ f = φ . GFf . G(in_FG^-1) = φ . G(Ff . in_FG^-1) = φ . G(Ff . fold_FG(FG(in_FG))) = {- Ff . FG(in_FG) = Fφ . FG(Ff) より cata-fusion -} φ . G(fold_FG(Fφ)) = fold_GF(φ)
cata-fusionの部分の図式:
応用?
これを使うとCPOと始代数等で書いた話の、「f:X→Y によらず Ff: FX→FY が正格であるとき、C⊥でのF始代数は、CでのF始代数にもなっている」という部分を示すことが出来る。Ffはfによらず正格なので、Fは F: C→C⊥ と見なせる。でもって、Uを忘却関手 C⊥→C とすると、FU: C⊥→C⊥ の始代数 (μFU, in_FU) に対して、(U(μFU), U(in_FU)) は UF: C→C の始代数になっている。
これを示すには lifting L: C→C⊥ と忘却関手 U: C⊥→C の随伴が関わってくるのではないかと思ってたけど、全然関係なくて意外だった。むー。
一般化?
終余代数についても同様のことは当然言える。
何かうまい一般化はないか?
λ. 『NHKにようこそ!』 滝本 竜彦
2006-10-26 [長年日記]
λ. プログラミング言語SML♯の開発とその基礎理論—多相型言語の基礎研究はもはや時代遅れか?— by 大堀淳
日本ソフトウェア科学会2006年度大会の大堀先生招待講演スライド。 <URL:http://d.hatena.ne.jp/sumii/20061026/1161824070> より。
査読者によって論文がrejectされる通常の理由「自分たちの仕事の方がよい」「我々の仕事の引用の仕方がなっていない」にちとウケた。
(後で書く)
2006-10-27 [長年日記]
λ. Categorical Semantics of Linear Logic For All by Valeria de Paiva
線形論理の圏論的なモデルに関して良くまとまっている。 また、論理の圏論的なモデルがどういうものかを知るにも良いと思う。
良く分からなかった部分
- 「categorical duality will produce a model of classical linear logic from one of intuitionistic linear logic, automatically.」という部分。
- DILL category に関する話での「Function spaces in the cartesian category can be induced from the linear ones.」の部分。
- Andrew Graham Barber の Linear Type Theories, Semantics and Action Calculi や Dual Intuitionistic Linear Logic あたりを読めばよいのだろうけど……
- セオリーの圏に関係する部分。
λ. 米田の補題と多相ラムダ計算
米田の補題の話をしていたので、多相ラムダ計算で対応するものを示してみる。
任意の F:*→* と C:* とが与えられていて、mapF: ∀X:*, Y:*. (X→Y)→(F X → F Y) が関手の条件を満たすとする。(∀X:*. (X → C) → F X) ≅ F C を示す。
id : ∀X:*. X→X id = (ΛX:*. λx:X. x) Φ : (∀X:*. (C→X) → F X) → F C Φ = λα:(∀X:*. (C→X) → F X). α C (id C) Ψ : F C → (∀X:*. (C→X) → F X) Ψ = λx:F C. ΛX:*. λf:C→X. mapF C X f x λα:(∀X:*. (C→X) → F X). Ψ (Φ α) = {- β reduction -} λα:(∀X:*. (C→X) → F X). ΛX:*. λf:C→X. mapF C X f (α C (id C)) = {- parametricity -} λα:(∀X:*. (C→X) → F X). ΛX:*. λf:C→X. α X (λc:C. f (id C c) = {- β reduction and η conversion -} λα:(∀X:*. (C→X) → F X). ΛX:*. λf:C→X. α X f = {- η conversion -} id (∀X:*. (C→X) → F X) λx:F C. Φ (Ψ x) = {- β reduction -} λx:F C. mapF C C (id C) x = {- functor law -} λx:F C. id (F C) x = {- η conversion -} id (F C)
2006-10-31 [長年日記]
λ. CPO圏で始代数が存在しないための条件
CPO圏CとCPO関手F:C→Cを考える。 もしCに非正格な t:1→E と自然変換 ε: F→Id が存在するならば、 Fの始代数は存在しない。
証明
任意の e: 1→E と φ: FX→X とについて、 (e o !) : X→E は φ: FX→X から ε_E: FE→E への準同型になっていることがわかる。
ここで t:1→E は非正格なので、少なくとも二つの異なる準同型が存在する。
- t o ! = t o ⊥_{X→1} ≠ ⊥_{X→E}
- ⊥_{1→E} o ! = ⊥_{X→E}
よって、φは始代数では有り得ない。
具体例
- Fがcomonadの場合
- 直積 F(X) = A×X
- 恒等関手 Id
- ストリーム Stream(A) = νX. A×X
- (constant) exponential functor F(X) = A⇒X
- a: 1→A を適当に選べば、自然変換 ev o <id_{A⇒X}, a o !> : FX→X が得られるので、条件を満たす。
疑問
これは十分条件だけど、この方向で必要十分条件は存在するか?
適用例 (1)
Haskellでは以下のような product comonad を考えることがある。
class Functor w => Comonad w where extract :: w a -> a duplicate :: w a -> w (w a) extend :: (w a -> b) -> (w a -> w b) extend f = fmap f . duplicate duplicate = extend id instance Comonad ((,) a) where extract (c,x) = x duplicate (c,x) = (c,(c,x))
もし (A,B) を厳密に(A×B)_⊥と解釈すると、以前の議論から F(X) = (A×X)_⊥ には始代数が存在し、背理法により extract :: (a,x) -> x
は自然変換ではないことになる。したがって、この場合には厳密にはcomonadになっていない。
適用例 (2)
Akihito Takano と Erik Meijer の Short-cut deforestation in Calculational Form では F代数を正格な FA→A と定義していて、始代数が存在すると言っているが、これは誤り。代数を正格に制限しても、準同型は正格なものに制限されていないので、前述のような関手に対しては始代数が存在しない。
しかし、Erik Meijer は Program Calculation Properties of Continuous Algebras では準同型も正格なものに制限してたはずなのに、この論文ではどうしてやめたんだろうね。
λ. 多相関数≠自然変換
多相関数が自然変換にならないことがあるというのは、漠然と知ってはいたけど、実際に直面してみると嫌らしいな。以前は yoriyukiさんの「Haskellは複雑すぎる気がする」という意見に同意できなかったけど、今なら完全に同意出来るよ(苦笑)
λ. 自然変換 ε: F→Id の性質
幾つかメモ。
ε_X: FX→X は正格
⇒ (⊥ o !) is strict ⇔ (ε_X o F⊥) is strict ⇒ ε_X is strict
したがって、任意のXについて ε_X は正格。
F は非正格性を保存
f: X→Yとする。
Ff is strict ⇒ (ε_Y o Ff) is strict ⇔ (f o ε_X) is strict ⇒ f is strict
対偶をとって「f is not strict ⇒ Ff is not strict」。
λ. CPO圏での自然変換の性質
上記の ε: F→Id についての話はもう少し一般化できるか。
α: F→G を自然変換とする。
正格性
α_X is strict ⇒ G⊥ o α_X is strict ⇔ α_Y o F⊥ is strict ⇒ α_Y is strict
よって「任意のXについて α_X は正格」もしくは「任意のXについて α_X は非正格」。
αとFfがstrictならGfも正格
αが正格だとする。
Ff is strict ⇒ α_Y o Ff is strict ⇔ Gf o α_X is strict ⇒ Gf is strict
ψ とおる。 [おめでとー。]
ψ ふみ [おめでとう.もうそんな時期か.]
ψ たけを [おめでとさんですー。]
ψ alpha [おめでとう。そして、ようこそ。社会人の世界へ:)]
ψ さかい [ありがとうございます。 立派な社会人になれるよう頑張ります。]