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日々の流転


2006-10-07 [長年日記]

λ. 『銃・病原菌・鉄〈上巻〉—1万3000年にわたる人類史の謎』 ジャレド・ダイアモンド(Jared Diamond) [著], 倉骨 彰 [訳]

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎(ジャレド ダイアモンド/Jared Diamond/倉骨 彰) を読んだ。非常に面白い。

多くの人は「何故、世界の富は今のように偏っているのか」という問いを持ったことがあるはずだ。 この本ではこの不均衡の原因を時間を遡って解き明かしている。 現代から見て直接の原因となるのは、西暦1400〜1600年ごろ(大航海時代)の時点における、技術や政治機構の格差である。だが、何故その時点でそのような格差が存在したのか? 紀元前一万一千年ごろには人類はみな同じように狩猟採取によって生活していたが、何故そこからこれだけ異なる発展を遂げたのだろうか? 何故ある文明が発達させた技術を、他の文明は発達させることが出来なかったのか?

著者はその究極的な原因は人間の能力の差だとか偶然だとかではなく、環境的な要因によるものだとしている。気候はどうだったか、栽培に適した植物があったか、家畜化可能な大型哺乳類がいたか、金属資源が存在したか等々である。

特に栽培に適した植物があったかどうかは重要だった。狩猟採取と比べ、農耕はより多くの人口を効率的に養うことが可能であり、高い人口密度をもたらした。人口が多いということそれ自体、他民族を殺したり征服するのに有利であった。また、余剰食糧の貯蔵・蓄積は食糧生産に関わらない人を養うのに不可欠であり、集権的で複雑な経済的構造を有する社会を実現することを可能にした。集権的政治機構の発達は、大規模な灌漑のような土木作業を行えることを可能にし、さらなる生産性の向上を実現した。 結局、栽培可能な植物や飼育できる家畜を手に入れることが出来たことが、政治形態を発達させ、読み書きの能力や鉄器の製造技術のような技術が発達したことの根本的な原因であった。

次に家畜である。 大型哺乳類の家畜は人間社会に、肉や乳製品といった食料、農業に必要な肥料、陸上での輸送運搬手段、物作りに使える布類、軍事的な機動力、農耕作業、織物のための毛など様々なものを提供してきた。しかし、哺乳類で現在家畜化されているのはほんの数種類だけであり、他の様々な種には家畜化が困難なそれぞれの理由があった。そして、家畜化に適した大型哺乳類は大陸ごとに偏って分布していた。

家畜は人間社会に大きな影響を与えたが、様々な病原体に対する免疫を人々に植え付けた点も重要である。定住生活・高い人口密度・家畜の集団飼育繁殖といった条件を備えた社会では、伝染病が流行することとなる。ヨーロッパでは様々な集団感染症が出現した。これらの病原体は多くのヨーロッパ人の命を奪ったが、ヨーロッパ人が他の大陸を征服する際にはこれらの病原体への免疫を備えない先住民に壊滅的な打撃を与えた。コロンブス以前にいた北米の先住民の人口は、西洋から持ち込まれた病原体によって、なんとそれ以前の5%にまで減ってしまったそうだ。なんとも恐ろしい数字である。

また、ユーラシア大陸は東西に長く広がっているのに対して、アフリカ大陸と南北アメリカ大陸は南北に長く広がっている。東西への移動では緯度が変わらないため、ユーラシア大陸では農耕・家畜、その他様々な技術、そして伝染病が速いスピードで伝播した。それによってこれまで述べたような条件が強化された。

著者の主張が正しいのであれば、現在の富の偏りは偶然ではなく必然だったことになる。それはそれで救いの無い話ではあるなぁ。

ところで、この本を読んでエイジオブエンパイアをプレイしてみたくなりましたよ。

参考

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本日のツッコミ(全4件) [ツッコミを入れる]
ψ yaizawa (2006-10-09 09:23)

AoEやるだけの反射神経がないのでカタンやりたいっす・・・.(ぉ

ψ さかい (2006-10-09 13:39)

げ、プレイしたことないんだけど、AoEって反射神経が必要なゲームなの?

ψ yaizawa (2006-10-10 16:38)

ラッシュとかやってる人速いから多分重要かと.<br>chikoさんとかなおえさんが詳しいかもしれません.(w

ψ さかい (2006-10-11 02:42)

この二人は絶対詳しいですよね (w