2004-12-17 [長年日記]
λ. First Steps in Modal Logic の Theorem 10.3
- 10.3 THEOREM.
Let S be a canonical formal system with canonical valued structure (𝔖,σ). For each formula φ the conditions
- 𝔖 ⊩u φ
- (𝔖,σ) ⊩v φ
- ⊢S φ
- ⊨Sv φ
- ⊨Su φ
are equivalent. In particular, each canonical system is Kripke-complete.
この定理の証明に Finally the implication (v)⇒(i) is an immediate consequence of canonicity.
とあるが、このどこにcanonicityが利いてくるのかが良くわからなくてちょっと詰まった。
関係⊨Suの定義から ⊨Su φ ⇔ (∀A. (∀ψ∈∅. A ⊩u ψ) → A ⊩u φ) ⇔ (∀A. A ⊩u φ) ⇒ 𝔖 ⊩u φ という風に言えてしまわない? と最初思ったのだが、これは関係⊨Suの定義を勘違いしていたためだった。 正しい定義は Φ ⊨Su φ ⇔ Φ∪S ⊨u φ なので、証明は ⊨Su φ ⇔ S ⊨u φ ⇔ (∀A. (∀ψ∈S. A ⊩u ψ) → A ⊩u φ) ⇒ 𝔖 ⊩u φ となる。formal system S がcanonicalだということの定義は 𝔖 が S のモデルであること、つまり ∀ψ∈S. 𝔖 ⊩u ψ なので、最後のステップが言える。
これなら納得。それにしても下らないことで時間を費やしたものだ。
λ. 異文化理解には相手の文化や信念の尊重が重要だが……
(『A Question of Belief』の感想をIRCから転載)
ペーターとメリーは、南太平洋に浮かぶ島国のシャーマニズムの影響が色濃く 残る村にボランティアとして赴任し、村人の生活向上を目標に意気揚々と活動 する。ある日メリーは衛生のために村の子供たちの体を洗い服を着替えさせる が、それは村の伝統に反し、シャーマンの怒りを買ってしまう。その数日後か らメリーは足の痛みを感じだし……
というちょっと神秘的な雰囲気のあるサスペンスであると同時に、援助や開発、 異文化理解の難しさについても教えてくれる小説である。少々不思議な読後感 の残る小説だと思う。
メリーに起こった異常はシャーマンの呪いだったのか、それとも医者の言うよ うに彼女自身の呪われたという思い込みのせいだったのか、というのがタイト ルの A Question of Belief の由来であり、物語の核心である。そう。人は信 念によって生きていて、時として思い込みによって人が死んでしまうことすら あるのだ。作中では医師が次のように語っている。
Sometimes people die, because they believe they are going to die. There is no other reason.
全く驚くべきことである。そして人が信念によって生きている以上、精霊や呪 いが本当に存在するかどうかはともかく、我々の「科学的」世界観が正しくて、 彼らの世界観が間違っていると決め付けていては、異文化理解は出来ないし、 開発や援助も出来ない。そういう意味では作中の
And the villagers' beliefs in spirits and in the powers of the shaman were important to them. I realised that it wasn't necessary for me or anyone else to change their spiritual beliefs to make their lives better.
というのは正しい。だが、現実はそう単純ではないのだ。例えば我々は人権を 普遍的価値と考えているが、我々の援助対象となる地域では女子割礼などそれ に反する文化があることもある。女子割礼の場合には現実に防止への取り組み が行われているし、単に文化や信念に干渉しなければ良いという問題ではない。
この小説を読むことで、あなたもちょっと不思議な読後感を感じるとともに、 きっと色々と考えさせられるのではなかろうか。
- Quotation
- `There is, Peter, there is!' she said. She grabbed my arm. `This thunder and lightning means the spirits of this island are angry with me. I know it!'
- Excellent Translation
-
「そこにいるわ、ペーター、そこにいるの!」
メリーはそう言って僕の腕を掴んだ。
「この雷は島の精霊が私に怒ってるんだわ。私にはわかるの!」 - Explanation
- 足の痛みが直らないメリーを医師に診てもらうため、村から遠く離れた都市へと二人が行こうとする途中の情景。メリーの恐怖が伝わってくる。