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日々の流転


2004-11-12 [長年日記]

λ. 数学への想像力と情熱

The Dot and the Line: A Romance in Lower Mathematics(Norton Juster) 『The Dot and the Line: A Romance in Lower Mathematics』の感想をIRCから転載)

For Euclid, no matter what they say. Once upon a time there was as sensible straight line who was hopelessly in love with a dot. という書き出しで始まるこの絵本は、なんと「直線」と「点」の恋愛物語だ。

見た目も心もまっすぐな the line、 完璧な美しさを備えながらも軽薄な the dot、 ワイルドでだらしない the squiggle。 the line は the dot に恋するが、彼女は the squiggle に夢中で……

ストーリーについて書くのは気恥ずかしいのでこの辺りにしておくが、 図形という抽象的なキャラクタを主人公とすることで、 普遍性のある寓話になっているように感じられる。 またオチもニヤリとさせられるものであった。

とかく、数学というのは無味乾燥で非人間的と思われがちだが、 ただの図形達からここまで想像することの出来る想像力、 そして茶目っ気たっぷりのお遊びには心が躍った。 また、著者が自分で描いたという挿絵もとても魅力的で、この物語にあっている。 これを読めば数学が無味乾燥だなんて二度と思わないはず。

Quotation
“Freedom is not a license for chaos,”
Excellent Translation
「自由は無秩序の専売特許じゃない」
Explanation
情熱を表現するために「自由」になろうとし、 努力の果てにそれを手に入れた the line のセリフ。
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λ. どんな境遇にあっても、頭脳さえあれば

("A Genius in a Wheelchair Stephen Hawking" の感想をIRCから転載)

ホーキングの名を知らない人はいないだろう。 本書はスティーブン・ホーキングの足跡と研究について、専門用語等を用いず に、一般向けに書かれている。

この文を読んでいる人の中には情報理論について勉強/研究している人も多い と思う。そういった人たちの中には、熱力学のエントロピーと情報理論のエン トロピーが実は等しいという話に関連して、彼の名前を知っている人が多いの ではないだろうか。

それはさておき、ホーキングは、筋肉と末端の神経が機能しなくなっていき、 やがては呼吸すらも出来なくなる難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)というハンディ キャップを背負いながら、研究を続け、今や現代を代表する科学者となってし まった人物である。

頭脳さえあれば研究できる宇宙論という領域を選んでいたという幸運もあった だろう。ホーキング自身も“My handicap does not interfere with studying cosmology”と語っている。だが、彼の成功は「どんな境遇にあっても、頭脳 さえあればクールなことは出来る」ということを実証しているに思われる。我々 の多くはホーキングの様な過酷な境遇にはないだろうが、少しは見習いたいも のである。

また、彼の陽気さ、社交性、ユーモアについても惹かれるものがある。 The power of his energy for life might be slowing down the progress of ALS disease. と書かれているが、そうであって欲しいものである。

それにしても、我々人間の様な小さな存在が、この広大な宇宙について理解し ようとし、そしてこれだけの理論を組み立ててしまったことは、全く驚くべき ことである。だが、その行き着く果てであるはずの万物の理論はいまだ見えな い。ホーキングらの超ひも理論やM理論の先にあるのか、VSL(光速変動理論) の先にあるのか、それとも……

Quotation
“Why? Why? Why” This is the word and the message Dr. Hawking is giving to us all.
Excellent Translation
「何故? 何故? 何故?」
これはホーキング博士のの言葉であり我々へのメッセージです。
Explanation
ホーキング博士は既存の理論等に囚われず、 子供のように「何故? 何故? 何故?」という疑問を捨てなかった。
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