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日々の流転


2008-10-06 [長年日記]

λ. ザリスキー位相

先日、プログラミング言語の方のschemeの話をしていたら、schemeつながりで代数幾何のスキーム(scheme, 概型)の話になり、そこからザリスキー位相の話が出てきた。 そういえば、ザリスキー位相というか Zariski spectrum の話は Topology via Logic の第12章 Spectra of rings でちょっと読んだことがあるな。 この章はおまけ的な章だったので、あまりまじめに読んではいなかったけど、Zariski spectrum って代数幾何で使うような概念だったのか。 代数幾何って魑魅魍魎の世界だと思い込んでいたので、そんなのが自分の知識の中に迷い込んでいたことに、ちょっとビックリだ。

ただ、Topology via Logic ではスペクトルは束のような代数に対して定義されるものだった。なので、環の Zariski spectrum も環のイデアル全体のなすquantaleを考えて、そのquantale上普遍的なフレームに対応するlocaleとして定義していた。そして、その後にこのlocaleの点が元の環の素イデアルに対応していることを示すという流れになっていた。

それに対して今回聞いた話だと、環のスペクトルを素イデアルの全体の集合として直接定義して、後から位相を入れようとしていた。

前者が位相ありきの考え方なのに対して後者は点ありきの考え方で、対照性が際立っていて面白い。

λ. 12.2 Quantales and the Zariski spectrum

読んでいて分かりにくかった点についてメモ。

Theorem 12.2.7 (i)

←: br = 1 or b modulo frames なのは、Proposition 12.2.2 より乗算が冪等だから。

→: Fが乗算を保存するのは、(∃r. br≦x)∧(∃r. br≦y) ⇒ (∃r. br≦xy) が乗算の単調性より成り立ち、この逆向きは 1 が最大元であることと単調性から xy≦x1=x と xy≦1y=y が成り立つことから言える。

Theorem 12.2.7 (ii)

→: Aはcoherentなquantaleなので、a∈A はコンパクトな要素からなる集合 S を用いて a = ⋁S と表すことが出来て、[a] = [⋁S] = ⋁{[c] | c∈S} 。[a] はコンパクトなので、ある a´∈S について [a] ≦ [a´] 。一方で当然 [a´]≦[a] なので [a]=[a'] で、あるコンパクトな要素 a´ が存在して a≡a´ であることが示せた。

←: bがコンパクトな要素として、[b] ≦ [⋁S] だとする。 (i)から br≦⋁S 。 A は coherent なので br もコンパクトで、ある c∈S について br≦c 。よって (i) より [b]≦[c] 。

Theorem 12.2.7 (iii)

A/≡Fr が coherent であることを示すために、Theorem 9.2.2 (iii) で同値であることが示されている条件のうち、finite meet が要素のコンパクト性を保つことを示す。 [ai]がコンパクトだとする。 (ii) より 各 ai に対して、コンパクトな ci が存在して、[ai]=[ci] 。 よって、⋀[ai] = ⋀[ci] = [∏ci] 。 coherent であることから ∏ci はコンパクトで、(ii)より [∏ci] = ⋀[ai] もコンパクト。

Theorem 12.2.8

イデアルが有限生成されていることと、quantaleの要素としてコンパクトであることとが同値であることを理解するのに手間取ってしまった。

I が a1, …, an ∈ R から生成されるイデアルだとする。 イデアルの集合 {Ij}j∈J に対して I⊆⋁j∈JIj とすると、ai∈I⊆⋁j∈JIj はjoinの定義より有限個の bj∈Ij の和で書ける。 よって、ai は有限個の Ij のjoinの要素になっている。 同様に、{a1, …, an} も有限個の Ij のjoinの部分集合になっているので、{a1, …, an} から生成されるイデアルである I も有限個の Ij のjoinの部分集合になっている。

逆に、Iがコンパクトだとすると、I = ⋁{Ra | a∈I} で、コンパクト性からある有限集合 S⊆I について I = ⋁{Ra | a∈S} で、有限集合Sから生成されるイデアルになっている。