2010-05-14 [長年日記]
λ. 「真理の度合理論は適切か? 〜ファジイ論理と真理理論〜」 by 矢田部俊介
ytbさんに一度直接お会いしてみたくて、講演を聞きに行った。
本発表では、ファジイ論理の『真理値』の解釈の問題を題材に、真理に関する意味論的な見方と、公理論的な見方が対立する例を紹介する。
ファジイ論理は、『真理値』として[0,1]の実数をとる意味論によって定義され、その真理概念は伝統的に「真理の度合理論」によって説明されてきた。しかし、その『真理値』が何を意味しているかを巡っては、Suzko とDummett による議論以来、論争が続いている。発表者は、この問題に関し、搦め手からアプローチする。すなわち、「真理の度合い」を、ファジイ論理(の一例であるLukasiewicz無限値述語論理)上の公理的真理理論の枠組みでによって定式化し、形式化された度合い理論が(枠組みの真理理論がω-矛盾であることにより)成立しないことを示す。この結果は、公理的真理理論における真理概念は度合理論では説明できないことを示すものであり、[0,1]を真理値ととらえる意味論的な見方に否定的な結果であるといえる。