私は、そこはかとない気持ち悪さを感じました。
登場する中年カップルが、あらかじめ魅力の無い人物として描かれた上、
男女それぞれの心象が小説の大部分を締めている奇妙な内容でしたが、
全体的に男性側の独白に比べ、
女性側の独白にまるでリアリティが感じられないな?と思いながら読みました。
女性側の独白を男性側が「これはこういうふうに考えるんだ。」とディスクライブして、
女性の自我までのっとるたがっている気持ち悪さが文中からただよってくるような気がした。
だいたい嫉妬を理由に、女の秘めた空想の中にまで、
入り込んで、無いものねだりする馬鹿男を許せる女などいるわけがない。
そんなことして許されるのは、可愛い息子か息子のように愛くるしい若い愛人くらいが、一般的なものでしょ。
自分はその立場にありながら、相手を愛していると信じる男と、
そんな男の裏切りを感じてしまう女の奇妙な考え方が、不気味なくらい人工的だった。
小説の女主人公に、どうかこの文自体からちゃんと逃げてくださいねと思わず願ってしまった。

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ほんとうの私 単行本 – 1997/10/24
「あなたは美しい。とっても美しい」――中年キャリアウーマンに届いた匿名の手紙。最初の不愉快さが好奇心に変わった時、年下の恋人との関係も揺れ動く…。愛と性を追い求めるクンデラの傑作!
- 本の長さ208ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日1997/10/24
- ISBN-104087732614
- ISBN-13978-4087732610
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
愛し合う中年男女の宿命の葛藤を、現実から幻想の世界へと展開させながら優しく描き出したメルヘン。小説の魔術師クンデラによる、熱く、切なく燃える熟年の危うい愛の物語。
登録情報
- 出版社 : 集英社 (1997/10/24)
- 発売日 : 1997/10/24
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 208ページ
- ISBN-10 : 4087732614
- ISBN-13 : 978-4087732610
- Amazon 売れ筋ランキング: - 660,284位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,007位フランス文学研究
- - 1,046位フランス文学 (本)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2011年8月5日に日本でレビュー済み
以前『存在の耐えられない軽さ』と『不滅』を読んだ僕にとっては、この作品はクンデラ3作目となる。本作はハードカバーの翻訳で200ページほどの小品で、前2作が世界文学の中で燦然と輝く大傑作なのに比べると、やや目立たない印象があるかもしれない。それでも、僕は、この作品を非常に丁寧に書かれた、奇妙で、とても面白い小説だと思った。
原題は、L’identit' (『アイデンティティ))。広告会社に勤める、老いの徴候が現れ始めた女性を軸に物語は展開する。彼女と同棲する経済力のない年下の男が奇妙な手紙(匿名で、「私はスパイのようにあなたの後をつけています。あなたは美しい、とっても美しい」と記した手紙)を、彼女にそっと届けたのだが、彼女がそれを自分の下着の中に隠しておいたこと、彼女が次の手紙を楽しみにするようになったことで、彼女は彼にとって、もはや以前の彼女ではなくなってしまった。それは、同時に、彼女自身のアイデンティティが揺らぎ、ますます不確かになり、変質し、最後は崩落の危機に陥ることであった。物語は、アイデンティティの支えがない、もはや現実と幻想とが交錯した場所で終焉を迎える。
匿名のストーカーじみた手紙を受け取り、心ときめいて箪笥のブラジャーの中に隠しておく中年女性は、言うまでもなく、滑稽だ。これは、この作品の中でもあくまで1つの例に過ぎないが、「滑稽」というのは、クンデラの小説を形容するのに、しばしば適切な語だと思う。それは、生と性の哀しみを内包した滑稽さであり、「それでもなお」悲痛に生きていくわれわれを包み、闊達に笑うような滑稽さだ。
原題は、L’identit' (『アイデンティティ))。広告会社に勤める、老いの徴候が現れ始めた女性を軸に物語は展開する。彼女と同棲する経済力のない年下の男が奇妙な手紙(匿名で、「私はスパイのようにあなたの後をつけています。あなたは美しい、とっても美しい」と記した手紙)を、彼女にそっと届けたのだが、彼女がそれを自分の下着の中に隠しておいたこと、彼女が次の手紙を楽しみにするようになったことで、彼女は彼にとって、もはや以前の彼女ではなくなってしまった。それは、同時に、彼女自身のアイデンティティが揺らぎ、ますます不確かになり、変質し、最後は崩落の危機に陥ることであった。物語は、アイデンティティの支えがない、もはや現実と幻想とが交錯した場所で終焉を迎える。
匿名のストーカーじみた手紙を受け取り、心ときめいて箪笥のブラジャーの中に隠しておく中年女性は、言うまでもなく、滑稽だ。これは、この作品の中でもあくまで1つの例に過ぎないが、「滑稽」というのは、クンデラの小説を形容するのに、しばしば適切な語だと思う。それは、生と性の哀しみを内包した滑稽さであり、「それでもなお」悲痛に生きていくわれわれを包み、闊達に笑うような滑稽さだ。
2003年11月29日に日本でレビュー済み
チェコからの亡命作家クンデラが現代のパリを舞台に描いた本なのですが、クンデラ特有の小さな物語が大きな主題によって結ばれて一編の小説になるという形式をとっていません。主人公の女とその恋人の描かれ方も、型にはまったもので、クンデラの個性が出ていないような気がします。夢と現実が混乱してくるというくだりも、切迫感がありません。クンデラはどうしちゃったのかな、と思わせる、ファンにはちょっと寂しい作品です。