Trolltech on Qt, KDE, and the QPL

トロールテックはフリーソフトウェアコミュニティのライセンスの議論に巻き込まることを避けることをポリシーとし、その代わり最善の技術的ソリューションを開発者たちに提供しようとしてきた。私たちは自分達を政治家ではなくでプログラマーだと思っているし、そのうえ議論にはとても沢山の時間を食ってしまうのだ。

たとえ、私たちが長く沈黙しすぎていたと感じているにしても、今が私たちの側の言い分を話すべき時であると思う。

始まりを指摘させてもらうおうと思う。私たちはフリーソフトウェアそのものや、多くのフリーソフトウェアを使うことを愛しているし、我々の被雇用者の多くはフリーソフトウェアの世界に由来するのだ。私たちはGNUのツールを初めとするフリーソフトウェアや、LinuxやFreeBSDといったフリーのオペレーティングシステムを本当に気遣っている。実際、それらが我々の主な開発環境を構成しているのだから。

最初にトロールテックの経歴とビジネスモデルについて少しだけ説明させてもらおうと思う。

私たちがQt Free Edition for Unix/X11を1995年に配布開始した時は、フリーソフトウェアはGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)の登場した時の競争に遅れをとっていた。これは、GUIを書くことが特別に難しかったとか、フリーソフトウェアの開発者たちがユーザーフレンドりーさを扱うのに不慣れだったということではなかった。質の違いの一番の理由は、商業開発者たちがこの種のソフトウェアの開発をとても簡単にする全く違ったツール群を利用できたからだ。これらのツールは通常、学生や自由な時間にハックをしていた人達が手にいれたり、趣味に投資しようと思う以上の値段だった。

UNIXのフリーソフトウェアの開発者に商業開発者たちが使っているのと全く同じツールを、無能力な無料版や奇妙な制限がかかったものではなくて、高品質なものを妥協なく誰にでも提供する事が私たちの目標だった。

これは今私たちがし続けている事である。実際、私たちが1998年にKDE Free Qt Foundationを設立したことはこれを続けている事だと確信している。このFoundationは常にQtのオープンソース版を提供する事をトロールテックに法的に義務づける。おかげて、Qtはソフトウェア開発のとても安全なプラットフォームになるのだ。

伝統的な商業的オープンソース開発モデルは、ソフトウェア自体をあげてしまって、そのサポートやサービスを提供することで成り立ってきた。私たちはこのモデルに幾つかの弱点があると信じている。Qtをとても良い状態にして、さらに良くドキュメントされた状態にすることで、サポートを不要にすべきだというのは我々の哲学である。もし私たちがこの目標を達成するためにQtを管理するなら、私たちの収益を減らすような何かではない、何か良いことをやってしまえるだろうと感じている。

私たちはこの道を見込んでいる。Qt Professional Edition licensesのライセンスを私たちから買う会社はより高品質なツールキットを入手できる。オープンソースモデルを使って開発されつづけて来て、世界中の何千もの独立したオープンソースプログラマによってテストとデバッグが行われてきたツールキットである。ある会社がライセンスを私たちから買ったら、それはこの世界中でオープンソース開発者によって無料で使われているツールキットの将来の開発のための資金を提供することになるのだ。

QtはQPLというオープンソースの定義を満たすライセンスで一年以上提供されてきた。私たちが得たそのフィードバックから、多くのオープンソース開発者たちがとても満足しているらしいということが判っている。QPLに関する議論のほとんどはGPLとの互換性についての質問についてだった。物事を明解にしておくためにも、私たちは最初から、Qtを使ったGPLライセンスのプログラムを作ることが出来ると表明し続けてきた。これはつまるとこ全て、GPLで「プログラム」と「派生物」という語句がいかに解釈されるかということになる。

「プログラム」のケースでは、あるプログラムがQtのAPIを使ったとき、Qtはそのプログラムの一部だとクレームがついた。私たちと私たちの顧問の弁護士たちはQtがそのケースにどのようになり得るかがわからなかった。もしそうなら、どのバージョンのQtが? Windows版、X11版、Qt/Embedded? それとも全て? これは他のケースにも当てはまるだろうか? XサーバーはXを使うプログラムの一部ということになるだろうか? Qt/EmbeddedのサーバーはQt/Embeddedを使うプログラムの一部ということになるだろうか?

Qtが最初にリリースされた時、コミュニティにはLesstiffが登場する以前でさえも、Motifを用いたGPLライセンスのプログラムを作る事が出来るという事実上の同意があった。Motifは占有的でフリーでなく、Qtよりもとても厳しいライセンスを持ったライブラリだったのにである。

今、「派生物」のケースでは、Qtを使うソフトウェアはQtの派生物であるとかその逆であるとかクレームがついた。Qtを使ったGPLライセンスのプログラムでは、ライセンスの議論では後者のケースだけが的を得ていた。GPLはGPLでライセンスされたプログラムの派生物について言っているだけで、他には何も言っていない。いくらかの人々は、QtはKDEの派生物だと真剣にクレームをつけ続けてきた。ざっくばらんに言って、QtはKDEが現れるずっと前から存在していたのだから、このような考えは馬鹿らしいことである。

これを言い続けたのは、私たちはコミュニティのすべての人が我々の見解に同意しているわけではないのを理解しているからだ。

これが言及され続けてきたので、私たちはQPLがリリースされる前に幾らかの関係者とQPLを彼らの目から見てもGPL互換にすることについて話し合い続けてきた。

私たちはこのゴールを達成したと考えている、という最近され続けてきたクレームは正しくない。私たちはこれを達成しようとするためにQPLに幾つかの変更を加えたが、最終的な結果はゴールからほど遠い。最終的には、もはや目的に貢献していない幾つかの変更を取り除くことを決定した。

私たちが良く質問されるのは、なぜオープンソース化した時にQtを単純にGPLで提供しなかったのかというものだ。私たちはQtを可能な限りフリーにしたいと同時に、多様なビジネスモデルを持ち続けていたいのだ、もし、GPLがGPLライセンスされたライブラリを占有的なソフトウェアの開発に使われることから効果的に守るならば、私たちはQtをGPLで再ライセンスするだろう。しかし、前述したように、私たちは、ライブラリを使う事が派生物を作ることであるとは信じていない。

私たちは、これらの論点に関するコミュニティの何人かの人物と話し合いを継続中であって、どこかへいこうとしているように見える。私たちはQPLバージョン2.0を作るために作業を続けているし、近い将来に最終版を出せるだろうと予期している。

私たちの計画している主な変更は、パッチに関する条項と6c条項の削除である。

パッチの条項は、Qtのユーザーを得体の知れないちょっとした非互換なバージョンのライブラリから避けさせることを意図していた。しかしながら、Qtのユーザーコミュニティが現在ではとても大きいので、現在の状況にはあまりふさわしくないだろう。私たちは、私たちにパッチを送ってくれる傾向にある人々も経験してきたから、私たちはそれをQtの公式版に含むことも出来るのだ。

6c条項はQPLのGPLとの非互換性でもっともクレームがつけられた条項である。この条項は、企業にソースコードを公共にリリースする代わりに、内部のみのオープンソースソフトウェアを作ることを保証する可能性を私たちに与えていたのだ。

望むらくは、QPLの2.0がライセンスに関する議論をこれっきりで終らせて、私たちがプログラミングに戻れるようにしてくれる事である。


Eirik Eng (eirik.eng@trolltech.com) は トロールテックの社長であると同時に共同設立者であり、コンピュータサイエンスの理系修士を持っている。 彼はHaavard Nordと一緒に最初のバージョンのQtを書いたが、髪の毛の寂しい社長にさせられてしまった。 彼は、円熟した34歳であるにも関わらず、時々、武装したnerf gunを持ってトロールテックのオフィスに潜伏する。彼は、美人のフランス人女性と結婚していて、2人の少年の父である。