本書は突破者として有名な宮崎学氏の単著だ。スポーツ新聞に投稿された相談に宮崎氏が答えるという形式をとっている。どのトピックスも見開き2ページにまとめてありどこからでも興味をひいた話から読める優れものである。読む場所を選ばない本だ。内容は多くの人のアウト・ローへのイメージを一変させるに十分なものであると思う。特に「親子」の章はそのような印象を強めるのではないか。氏は家庭を「生きる場」と位置づけ、本来家族は社会から身を寄せ合って守っていけるシェルターの役割を果たしている場だという。ところが、親の「ブランド」や「いい子」といった社会的な価値観を家庭にまで持ち込むことで家族はその役割と失ってしまうという。スマートな「生き方」ばかりを家庭の中でも要求してしまうことは、「生きる」エネルギーを奪ってしまうことだとする。また恋愛に関して氏が「恋愛は無償の行為」「世間体など気にしていては恋などできぬ!」などというとき今アウト・ローが一番ピュアな生き方なのかもしれないと思わせる。福田和也の『悪の恋愛術』とは対極的であろう。
氏はいつも、相談者に真剣に生きているかどうか、その「覚悟」を問う。つまらない見栄を捨てがむしゃらに生きたらそれほど悩むようなことは多くない。氏は自分でなにをしたいかもわからない「ヘタレ」を喝破する。本人の気力がなければ開ける道などないのである。宮崎氏のヤクザ像(Ⅰ金のないこと。Ⅱ金を動かすことに興味がない特性を持っている。Ⅲ働くことが嫌い。Ⅳわかっていても損する側に回れること。Ⅴ経済外的理由㡊人のために命を賭けられること。)任侠・仁義といったアウト・ローの美学は現代人の腰の引けたスマートな生き方よりもずっと信頼できるものだと思えるのは私だけだろうか。そして最後に、精一杯生きるものにはアウト・ローはいつも優しい。氏の言を引こう。「人生、つねに「これから」だよ。明日を語ろう。」

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突破論: トラブルを逆手にとれ (カッパ・ブックス) 新書 – 2001/2/1
宮崎 学
(著)
- 本の長さ223ページ
- 言語日本語
- 出版社光文社
- 発売日2001/2/1
- ISBN-104334007023
- ISBN-13978-4334007027
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
「スポーツニッポン」紙上で連載された人生相談の中から、現代的なテーマを抽出してまとめた。この世で起こったことはこの世で解決できる、という思想のもと、親子、夫婦、仕事、恋愛、金銭のトラブルを突破する。
著者について
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