= ストック経済論2002 レポート課題 #1 学籍番号 70103970 総合政策学部2年 酒井 政裕 == 80年代の傾向 総資産を見ると、80年にはGDPの10.6倍であったのが、90年には16.6倍にまで 拡大している。したがって、この間にフローの伸び以上の速度で総資産が蓄積 され、急速にストック化が進んでいる事がわかる。 一方、正味資産を見ると80年にはGDPの0.53倍であったのが、90年には0.49倍 に縮小した。(98年には更に0.43倍へと縮小している) これは総資産に対する 負債の割合が増えていることを意味する。 また、総資産の増加4612兆円の約半分である2233兆円が土地と株式の項目の拡 大によるものである事がわかる。1985年のプラザ合意以降為替レートは円高に 転じたが、円高不況を懸念して大幅な金融緩和政策が行われた。この過剰な通 過が土地や株式に向かったために土地と株式の価格が大幅に上昇したと考えら れている。 == 90年代の傾向 前述のように、90年には総資産はGDPの16.6倍にまで達したが、98年にはGDPの 14.9倍と若干低下している。 縮小している資産の主な項目は、749兆円減少の土地資産と、293兆円減少の株 式であり、こららの合計が1042兆円に達する。このことから、資産のGDP比の 減少は、バブルの崩壊によるキャピタルロスが主因と考えられる。 土地資産の比率を見ると、80年には総資産の27%、90年には総資産の33%だった のが、98年には総資産の21%にまで縮小している。 総資産における土地資産の比率が下がった分、どのような資産の比率が伸びて いるだろうか? 90年と98年を比較すると、土地と株式を除く資産の比率はあ まり変化していないが、純固定資産が若干伸びている。 == 民間部門と公的部門の差 80年と90年とを比較すると、民間部門の総資産は約3.0倍になっているのに対 して、公的部門の総資産は約2.3倍にしかなっていない。一方、90年と98年と を比較すると、民間部門の総資産は約0.95倍になっているのに対して、公的部 門の総資産は約1.5倍にもなっている。 80年代と90年代で、総資産の増加の傾向が民間部門と公的部門で逆になってい る原因としては、それぞれの時点での景気が大きな要因として考えられる。 民間部門は、好況であった80年代には積極的に投資を行ってきたと考えられる。 そして、90年代はバブルの崩壊とそれに続く長期の景気低迷をうけて、投資を 縮小し負債の返済を推めてきた結果、公共部門よりも増加率が低くなったと筆 者は考えた。しかし、これだけでは、民間部門の、長期債券, 日銀借入金, コー ル・売渡手形の縮小は説明できても、市中借入金, 政府借入金が拡大している 事を説明できない。 公的部門に目を移すと、90年代には長期債券, 政府借入金などの負債が大幅に 増えており、これは税収減や不況時の積極財政の結果と思われる。事実、90年 に337兆円だった公共部門の純固定資産は98年には98年には508兆円に増えてお り、キャピタルゲインを無視すれば、これは平均して年に21兆円の社会的ストッ ク形成(≒ 公共投資)が行われていた事になる。この数字は80年代のそれに比 べて非常に大きい。